「自分は関係ない」という、危険な思い込み
「サイバーセキュリティ」と聞くと、多くの人が、「大企業や政府の話で、自分には関係ない」と、感じるかもしれません。しかし、この思い込みこそ、最も危険です。デジタルなくして生きられない現代において、誰もが、サイバー攻撃の標的になりうるからです。このコースでは、デジタル社会の安全を、脅威・防御・社会の三面から、読み解きます。難しい技術の話ではなく、なぜ狙われ、どう身を守り、社会として何が問われているかを、理解することが目標です。まず、「なぜ、私たちは狙われるのか」から、始めましょう。この理解が、自分を守る、第一歩になります。
誰もが、標的になる理由
「自分のような、普通の個人が、なぜ狙われるのか」——そう思うかもしれません。しかし、現実には、普通の個人も、大いに狙われます。その理由を、理解しましょう。
- 無差別・大量の攻撃:多くのサイバー攻撃は、特定の誰かを狙い撃つのではなく、無差別に、大量に仕掛けられます。何百万人にも、一斉に、怪しいメールを送りつける。その中の、ごく一部でも引っかかれば、攻撃者は、得をする。つまり、あなたが「特別」でなくても、無防備であれば、引っかかるリスクがあるのです
- 個人の情報にも、価値がある:あなたの、個人情報、アカウント、パスワード、クレジットカード情報。これらは、攻撃者にとって、お金になる価値を持ちます。盗んで、売ったり、悪用したりできる
- 踏み台として、狙われる:あなたの端末やアカウントが乗っ取られると、それが、次の攻撃の踏み台にされることがあります。あなたを経由して、あなたの知人や、他の標的が、攻撃される
つまり、「有名でも、金持ちでもない、普通の個人」であっても、デジタルを使っている限り、標的になりうるのです。「自分は関係ない」という思い込みは、無防備につながり、無防備は、格好の標的になります。まず、この現実を、受け入れることが、身を守る出発点です。
なぜ、攻撃するのか——その動機
サイバー攻撃を、正しく理解するには、「なぜ、攻撃するのか」——その動機を、知ることが重要です。かつて、サイバー攻撃は、技術を誇示する、いたずらや愉快犯が、中心でした。しかし、今は、まったく違います。攻撃には、明確な動機があり、しばしば、組織的に、行われます。
- 金銭:最も大きな動機です。詐欺でお金をだまし取る。データを人質にとって、身代金を要求する。盗んだ情報を、売る。サイバー攻撃は、今や、大きな「もうかる犯罪ビジネス」になっています
- 情報の窃取:企業の機密、個人の情報、国家の秘密。価値ある情報を、盗み出す
- 混乱:組織や、社会のシステムを、麻痺させ、混乱させる。インフラを、止める
- 政治的・国家的な目的:国家が関与する攻撃も、現実になっています。他国のインフラや選挙を、妨害する。これは、新しい形の対立です
とりわけ重要なのは、サイバー攻撃が、今や組織的・産業的に行われている、ということです。分業化された、犯罪の「産業」が、存在します。だからこそ、攻撃は、絶えず、大量に、そして巧妙に、仕掛けられ続けるのです。相手が、遊びではなく、利益を追求するビジネスだと知れば、その脅威の深刻さと、絶えなさが、理解できます。
脅威を、正しく恐れる
サイバー攻撃の脅威を理解することは、前にリスク社会で学んだ、「正しく恐れる」ことの、実践です。過度に恐れて、デジタルを避けるのも、逆に「自分は関係ない」と油断するのも、どちらも、適切ではありません。
- 油断しない:「自分は狙われない」という思い込みを、捨てる。誰もが標的になりうると、認識する
- 過度に恐れない:正しく身を守れば、リスクは大きく減らせる。恐れて何もできなくなる必要はない
- 相手を、知る:攻撃の動機や手口を知れば、どこに注意すべきかが、分かる
このコースを通じて、脅威を正しく理解し、身を守る術を身につければ、サイバー攻撃の脅威と、冷静に付き合えるようになります。次のレッスンでは、具体的に、どんな攻撃の手口があるのかを、見ていきましょう。手口を知ることが、だまされないための、最大の防御になります。
ニュースで使う視点
サイバー攻撃、情報漏洩、ランサムウェア(身代金要求型の攻撃)に関わるニュースに触れるときは、「これは、どんな動機の攻撃か」「なぜ、それが狙われたのか」を考えてみてください。攻撃の動機と、誰もが標的になりうるという認識は、サイバーセキュリティを、自分ごととして捉える第一歩です。次のレッスンでは、具体的な攻撃の手口を見ます。