「エネルギー」という一本の糸
電気代のニュース、ガソリン価格、脱炭素、原発の再稼働、ロケット打ち上げ——一見バラバラなこれらの話題は、エネルギーという一本の糸でつながっています。物理を学校で習ったときの苦手意識は忘れて大丈夫。ニュースを読むのに必要なのは、たった一つの感覚です。エネルギーは姿を変えるが、総量は変わらない。
エネルギー保存——作られも消えもしない
物理学で最も重要な法則の一つがエネルギー保存の法則です。エネルギーは無から生まれず、消えもしない。ただ形を変える(変換される)だけ——これがすべての出発点です。
私たちの周りは、エネルギーの変換だらけです。
- 食べ物の化学エネルギーが、体を動かす運動エネルギーと熱に変わる
- ガソリンの化学エネルギーが、エンジンで車の運動エネルギーに変わる
- ダムの水の位置エネルギーが、落下して運動エネルギーになり、発電機で電気エネルギーになる
「エネルギーを作る」「エネルギーを生む」という日常表現は、物理的には不正確です。正しくは「別の形のエネルギーを、使いたい形に変換する」。発電所は電気を無から生んでいるのではなく、化石燃料や核や太陽光を電気に「両替」しているのです。
変換にはロスがつきもの
もう一つ大事な感覚があります。エネルギーは総量こそ保存されますが、変換のたびに一部が使いにくい熱に逃げていきます。電球は電気の多くを光ではなく熱にしてしまい、エンジンもエネルギーの多くを熱として捨てています。「効率◯%」という数字は、投入したエネルギーのうち目的の形に変換できた割合のことです。省エネや高効率化とは、この逃げる分をいかに減らすかの勝負なのです。
ニュースで使う視点
エネルギーの視点を持つと、多くのニュースが整理できます。「電力需給が逼迫」とは、必要な変換量に供給が追いつかないこと。脱炭素(緩和と適応)とは、変換の元手を化石燃料から別のもの(太陽・風・核)へ切り替える挑戦。電気代の高騰は、その元手の価格が上がった結果です。エネルギー政策の議論は突き詰めれば、「何を元手に、どれだけ効率よく、どんなリスクで電気を得るか」の選択(政策のトレードオフ)に行き着きます。
次のレッスンでは、その元手の有力候補でありながら最も論争的な原子力と放射線を、感情ではなく数字で読む方法を学びます。