アズリテ
音の科学・ レッスン 3 / 4
自然科学 / 物理・宇宙

音楽と数——音階の科学

読了目安 4/灯る概念:

音楽の裏に、数が隠れている

音楽は、感性や感情の世界だと思われがちです。しかし、その裏には、驚くほど美しい数の秩序が隠れています。なぜ、ある音とある音は「ハモって」心地よく、別の組み合わせは「濁って」聞こえるのか。なぜ、世界中の音楽が、似たような音の階段(音階)を使うのか。これらの問いの答えは、前レッスンで見た音の高さ——振動数と、数の関係にあります。音楽と数学が、深いところでつながっている。この発見は、古代から人々を魅了してきました。

調和は、単純な数の比

古代ギリシャの時代から、人々は不思議なことに気づいていました。調和して心地よく聞こえる音どうしは、単純な数の関係を持つ、ということです。具体的には、二つの音の振動数の比が、単純な整数の比になっているとき、それらはよく調和して聞こえるのです。

最も分かりやすい例が、オクターブです。「ド」と、一つ上の「ド」。高さは違うのに、まるで「同じ音」のように、非常によく調和します。この二つの振動数を調べると——

  • 上の「ド」の振動数は、下の「ド」のちょうど2倍

なのです。2対1という、最も単純な整数の比。だから、これほどよく調和する。同じように、よく調和する音の組み合わせ(和音)は、3対24対3といった、単純な整数の比になっています。逆に、比が複雑になるほど、音は濁って(不協和に)聞こえる傾向があります。

音楽の「ハモる・ハモらない」という、感覚的に思えるものの裏に、こんなにも単純で明快な数の法則が隠れている——これは、驚くべきことです。私たちの耳は、いわば、振動数の比が単純かどうかを、感じ取っているのです。

音階も、数でできている

この数の秩序は、音楽の基本である音階(ドレミファソラシド、といった音の階段)にも、貫かれています。世界中の音楽が使う音階は、でたらめに音を並べたものではありません。調和する数の比を基準に、音の高さを配置したものなのです。

  • オクターブ(2対1)という枠の中を、調和する比を使って、いくつかの音に分ける
  • こうして、心地よく響く音の階段——音階が生まれる
  • 面白いことに、遠く離れた文化の音楽でも、この数の原理にもとづく、似た構造の音階が、しばしば見られます

つまり、音楽の骨組みそのものが、数学的な構造を持っているのです。作曲家や演奏家が、数式を意識していなくても、彼らが作る美しい音楽は、この数の秩序の上に成り立っています。音楽は、人類が数学を「意識せずに実践してきた」、最も古く、最も普遍的な営みの一つとも言えるでしょう。

感性と論理は、対立しない

音楽と数のつながりは、私たちに、深い示唆を与えてくれます。それは、感性と論理は、対立するものではない、ということです。

音楽は、心を動かす、感性の芸術です。同時に、その裏には、明快な数の論理が流れている。美しさと、数学的な秩序が、同じものの表と裏なのです。これは、前に美学で見た「美と秩序の関係」とも通じます。私たちは、しばしば「理系と文系」「論理と感性」を、対立するものと考えがちです。しかし、音楽は、その二つが、実は深いところでつながっていることを、教えてくれます。世界の美しさを、感じることと、理解すること——その両方ができたとき、世界は、より豊かに見えてくるのです。

ニュースで使う視点

音楽、楽器、音響、そして「音楽と脳」「音楽と数学」といった話題のニュースに触れるときは、「音楽の裏に、数の秩序がある」という視点を思い出してみてください。感性の世界に見える音楽が、実は明快な数の法則を持っていると知ることは、世界を見る目を、一段深くしてくれます。次の最終レッスンでは、この音が、どうやってデジタル技術で記録され、扱われるのかを見ます。

理解度チェック

全問回答でレッスン完了・概念が灯ります
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Q1二つの音が「よく調和して聞こえる(ハモる)」ことと、数の関係にはどんなつながりがありますか?
Q2「オクターブ(ドと、一つ上のド)」の関係を、振動数の面から説明したものはどれですか?