「見える」ことの、不思議
私たちは、光のおかげで、世界を見ています。あまりに当たり前で、ふだん光そのものについて考えることは、ほとんどありません。しかし、「光とは何か」という問いは、実は、物理学の最も深い問いの一つでした。このコースでは、この身近で不思議な現象、光を、科学の目で読み解きます。光を理解すると、色がなぜ生まれるのか、空がなぜ青いのか、カメラや光通信がどう働くのか——身近な世界の、隠れた仕組みが見えてきます。(なお、このコースは光そのものの物理を扱い、目がどう光を捉えるかという生物学的な仕組みは扱いません。)まず、光の正体から始めましょう。
光は、電磁波という波
光の正体は、電磁波という、波の一種です。前に音で学んだように、波には様々な種類がありますが、光は、電気と磁気の振動が伝わっていく波なのです。
ここで、光と音の、決定的な違いがあります。音は、空気などの物質がないと伝わりませんでした。しかし、光は、真空(何もない空間)でも伝わります。これは、極めて重要な性質です。
- だからこそ、太陽の光は、ほとんど何もない宇宙空間を越えて、1億5千万キロメートルの彼方から、地球まで届く
- 遠い星の光も、宇宙の真空を越えて、私たちの目に届く
伝えるための物質を必要とせず、真空を越えて進める——この性質が、光を、宇宙を満たす、特別な存在にしています。もし光が、音のように物質を必要としたなら、私たちは太陽の光も、星の光も、見ることができなかったでしょう。
光の速さ——宇宙の最高速度
光には、もう一つ、驚くべき性質があります。それは、途方もなく速いことです。光の速さは、1秒間に約30万キロメートル——地球を7周半もする速さです。私たちの日常では、光は「一瞬で」届くように感じられます。スイッチを入れれば、部屋は瞬時に明るくなります。
この光の速さは、実は、現代物理学において、宇宙の最高速度として、特別な意味を持ちます。何ものも、光より速くは進めない。アインシュタインの相対性理論は、この光の速さを土台に、時間や空間についての、驚くべき結論を導きました。身近な光の速さが、宇宙の根本法則に関わっている——これは、光の奥深さの一つです。
見える光は、ごく一部
私たちが「光」として見ているもの——可視光(見える光)は、実は、電磁波という大きな一族の、ごく一部にすぎません。電磁波には、波長(波の長さ)によって、様々な種類があります。
- 電波:波長が長い電磁波。通信に使われます
- 赤外線:可視光より少し波長が長い。熱として感じるものです
- 可視光:人が見ることのできる、狭い範囲の波長。私たちが「光」と呼ぶもの
- 紫外線:可視光より少し波長が短い
- X線:波長がとても短い電磁波
これらは、すべて同じ電磁波の仲間で、違いは波長だけです。そして、そのうち、ちょうど人が見ることのできる狭い範囲を、可視光と呼んでいるのです。つまり、私たちは、電磁波という広大な世界の、ほんの小さな窓を通して、世界を見ている。赤外線や紫外線、電波は、そこにあふれているのに、私たちには「見えない」だけなのです。この事実は、前に天文学で見たように、宇宙の観測でも重要です。見えない電磁波を捉えることで、科学は、目に見えない世界を「見て」きたのです。
ニュースで使う視点
光通信、赤外線・紫外線の利用、宇宙からの観測、レーザー技術——光や電磁波に関わるニュースに触れるときは、「これは電磁波のどの波長を使っているか」「可視光か、見えない光か」を考えてみてください。光を電磁波として捉える視点が、様々な技術の理解につながります。次のレッスンでは、その光から、どうやって「色」が生まれるのかを見ます。