アズリテ
哲学入門・ レッスン 4 / 5
人文科学 / 哲学・思想

倫理学の三大理論

「正しさ」を測る、3つのものさし

一台の暴走するトロッコの先に5人の作業員。あなたがレバーを引けば線路が切り替わり、5人は助かるが、別の線路にいる1人が犠牲になる。レバーを引くべきでしょうか?

この有名な思考実験(トロッコ問題)への答えは、あなたがどの「ものさし」で正しさを測るかによって変わります。倫理学には大きく3つの理論があります。

功利主義:結果で測る

功利主義は、行為の正しさをその結果がもたらす幸福の総量で測ります。標語は「最大多数の最大幸福」。18〜19世紀のベンサムとミルが体系化しました。

トロッコ問題なら、5人と1人を比べて「レバーを引くべき」となりそうです。功利主義の強みは、明快で計算可能なこと。公共政策の費用対効果分析には、この発想が息づいています。

弱点は、少数者の犠牲を正当化しかねないことです。「1人の健康な人の臓器で5人の患者が救えるなら?」と問われると、多くの人は直感的に「それは違う」と感じるでしょう。

義務論:原則で測る

義務論は、結果ではなく、行為が道徳的な原則に従っているかで正しさを測ります。代表者は18世紀のカントです。

カントの原則のひとつはこうです。「人格を、単なる手段としてではなく、常に同時に目的として扱え」。人を「何かのための道具」として使い捨ててはならない、という考えです。この立場では、5人を救うためであっても、1人を意図的に犠牲にすることには強い疑問が向けられます。

義務論の強みは、人間の尊厳を揺るがない土台に置くこと。弱点は、原則同士が衝突したとき(うそをつけば人命が救える場合など)に融通が利きにくいことです。

徳倫理学:人柄で測る

3つ目の徳倫理学は、問いの立て方そのものを変えます。「どの行為が正しいか」ではなく、「どのような人間であるべきか」を問うのです。起源は古代ギリシャのアリストテレスにさかのぼります。

勇気、正直、節度、思いやりといったを身につけた人が、状況に応じて適切にふるまう——それが倫理の姿だと考えます。マニュアルではなく、良き実践者を育てる発想です。

3つを使い分ける

現実の私たちは、無意識にこの3つを使い分けています。政策を評価するときは功利主義的に、人権を語るときは義務論的に、人を育てるときは徳倫理学的に。どのものさしを、なぜ今使っているのかを自覚できること。それが倫理学を学ぶ実践的な価値です。

理解度チェック

全問回答でレッスン完了・概念が灯ります
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Q1功利主義の基本的な考え方はどれですか?
Q2カントの義務論の特徴として正しいものはどれですか?
Q3徳倫理学が中心に置く問いはどれですか?

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