宇宙へ、どうやって出るのか
ロケットの打ち上げ、宇宙ステーション、火星探査、人工衛星——宇宙開発のニュースは、頻繁に報じられます。しかし、その根っこにある「そもそも、どうやって宇宙へ出るのか」を、正確に理解している人は、多くありません。このコースでは、宇宙開発を、仕組みから読み解きます。まず、すべての出発点——ロケットは、なぜ飛ぶのかという、素朴な問いから始めましょう。ここには、前に物理で学んだ基本的な法則が、鮮やかに働いています。(なお、このコースは宇宙開発の技術と社会を扱い、宇宙生命の話題は扱いません。)
作用と反作用——押せば、押し返される
ロケットが飛ぶ原理は、実は、驚くほどシンプルな物理法則にもとづいています。それは、作用・反作用の法則です。この法則は、こう述べます。「あるものを押すと、同じ強さで、押し返される」。
日常でも、経験することです。壁を手で押すと、壁も、あなたの手を押し返す。ボートの上から、岸を押すと、ボートは反対方向へ動く。スケートで、相手を押すと、自分も後ろへ動く。何かを一方向に押すと、自分は反対方向に押される——これが、作用・反作用です。
ロケットは、この法則を、利用しています。
- ロケットは、燃料を燃やして、ガスを、勢いよく、後方へ噴射する
- ガスを後ろへ押し出すと、その反作用で、ロケットは前方へ押される
- こうして、ロケットは、前進する
つまり、ロケットは、自分が噴き出すガスの反作用で、進むのです。ここが、重要なポイントです。飛行機は、空気を押して進みますが、ロケットは、自分が噴き出すガスを押すので、まわりに空気がなくても進めます。だから、空気のない宇宙空間でも、ロケットは進めるのです。「宇宙には空気がないのに、どうやって進むの?」という疑問の答えが、ここにあります。ロケットは、押す相手を、自分で用意しているのです。
なぜ、宇宙へ行くのは大変なのか
ロケットの原理は単純ですが、実際に宇宙へ行くのは、極めて大変です。ロケットの打ち上げが、あれほど巨大で、費用がかかり、時に失敗するのは、なぜでしょうか。理由は、地球の重力を振り切ることの、難しさにあります。
前に天文学で学んだように、地球には、強い重力があります。この重力が、あらゆるものを、地球に引きつけています。宇宙へ出るには、この重力を振り切って、非常に大きな速度まで、加速する必要があります。どれくらいの速度かというと、想像を絶する速さです。
そして、これほどの速度まで加速するには、膨大なエネルギー——つまり、大量の燃料が要ります。
- ロケットの大部分は、実は、燃料タンクです。運びたい荷物(衛星や人)は、ほんの一部
- 大量の燃料を積むと、ロケット自体が重くなり、それを持ち上げるのに、さらに燃料が要る、という悪循環
- だから、宇宙へわずかな荷物を運ぶだけでも、巨大なロケットと、莫大な費用が、必要になる
この「重力を振り切るのに、膨大なエネルギーが要る」という壁が、宇宙開発を、技術的にも費用的にも、大変な挑戦にしているのです。前にエントロピーや効率で学んだように、エネルギーの制約は、宇宙開発でも、大きな課題です。ロケットの打ち上げが、いつも大ニュースになるのは、それが、これほど困難な挑戦だからなのです。
宇宙開発の、出発点
作用・反作用でロケットが飛び、しかし重力を振り切るのは大変——この基本を理解すると、宇宙開発のニュースが、見えやすくなります。
- なぜ、ロケットは、何段にも分かれているのか(燃料を使い切った部分を、切り離して軽くするため)
- なぜ、ロケットの再利用が、注目されているのか(莫大な打ち上げ費用を、下げるため)
- なぜ、宇宙開発には、これほどお金がかかるのか
これらは、すべて、「宇宙へ出るのは、大変だ」という、この根本から来ています。次のレッスンでは、こうして苦労して打ち上げられた人工衛星が、実は、私たちの日常を、いかに支えているかを見ます。宇宙開発は、遠い宇宙の話に見えて、実は、地上の私たちの暮らしと、深くつながっているのです。
ニュースで使う視点
ロケットの打ち上げ、宇宙開発のコスト、再利用ロケットに関わるニュースに触れるときは、「ロケットは反作用で飛び、重力を振り切るのに膨大なエネルギーが要る」という基本を思い出してみてください。この理解が、宇宙開発の難しさと、技術革新の意味を、読み解く土台になります。次のレッスンでは、人工衛星が支える、私たちの暮らしを見ます。