「平均」はいちばん身近で、いちばん誤解される
平均年収、平均寿命、平均気温——ニュースは平均であふれています。統計の読み方では統計のだまし全般を学びましたが、このコースではその土台を一段深く、道具として使えるレベルまで掘り下げます。最初の道具は、データを一言で要約する代表値です。
3つの代表値を使い分ける
データの「真ん中らしさ」を表す数字には、実は3種類あります。
- 平均値:全部を足して人数で割る。最も有名だが、外れ値に弱い
- 中央値:全員を並べたときの、ちょうど真ん中の人の値。外れ値に強い
- 最頻値:最も人数が多い値。「典型的な人」を表す
なぜ使い分けが必要か。有名な例が年収です。平均年収は、たいてい人々の実感より高く出ます。理由は、ごく少数の超高所得者が平均を強く引き上げるからです。極端な話、100人の村に大富豪が1人引っ越してくれば、村の平均年収は跳ね上がりますが、99人の暮らしは何も変わりません。このとき中央値はほぼ動きません。平均と中央値が大きくずれていたら、分布が偏っているサイン——これは実用度の高い読みの技術です。
数字の「形」を見る——分布
代表値は便利ですが、しょせん一つの数字への圧縮です。同じ平均でも、データの「形」はまるで違うことがあります。平均60点のテストは、全員が60点前後に固まっているのかもしれないし、100点組と20点組に二極化しているのかもしれません。前者と後者では、取るべき対策がまったく違います。
だからデータを見るときは、ヒストグラム(度数分布)で形を確認します。山は一つか二つか。左右対称か、どちらかに裾を引いているか。格差の議論で「平均は上がったが中間層が減った」といった現象は、分布の形を見ないと捉えられません。
ニュースで使う視点
「平均◯◯」という数字を見たら、3つ問うてください。中央値はいくつか(平均とずれていないか)。分布はどんな形か(二極化していないか)。外れ値に引っ張られていないか。 平均という一つの数字の陰で、現実は多様な形をしています。次のレッスンでは、その「形」を一つの数字で測る道具——ばらつき(標準偏差)を学びます。