京都大学などの研究チームが、トルコ南部のウチャーズリ II 洞窟で、ネアンデルタール人とホモ・サピエンス(現生人類)両方の化石を見つけたと発表した。驚くのはその中身だ。両者は 2 万年以上にわたり、同じ石器づくりや食料調達だけでなく、「食べられないが美しい貝殻を集める」という習慣まで共有していたという。
ここで効いてくるのが、芸術は何のためにあるかという視点だ。食料の確保が生死を分ける時代に、腹の足しにならない貝をわざわざ集める——それは、実用を超えて「美しい」に心を動かされる感覚が、はるか昔から人間にそなわっていたことを示す。芸術や好奇心は、余裕ができてから生まれる贅沢ではなく、人間の根源的な欲求なのかもしれない。
もう一つの読みどころは、これが別々の進化の道を歩んだ二つの人類種の話だということだ。私たちはつい「文化を持つのは私たちだけ」と考えがちだが、異なる種が長く隣り合い、価値観を分かち合っていた可能性がある。手がかりは、手のひらに載る小さな貝の化石だ。わずかな証拠から数万年前の心の動きまで読み解く——発見のニュースは、結論だけでなく「何をどう根拠づけたか」まで味わうと、いっそう面白くなる。