「経済圏」という言葉を、雰囲気ではなく中身で読んでみます。報道によれば、ソフトバンクとスマホ決済のPayPayが、セブン&アイ・ホールディングスへの出資を協議しています。金額は3000億円程度になる見通しで、三井住友カードなども検討に加わっているとされます。
まず素朴な疑問から。通信と決済の会社が、なぜコンビニに出資するのでしょうか。物を売って儲けたいなら自分で店を作ればいい、という気もします。
鍵になるのがネットワーク効果です。決済サービスは、使える店が多いほど利用者に選ばれ、利用者が多いほど店が導入したくなる。利用者と加盟店が互いを呼び込むので、いったん回り始めた側が強くなりやすい。日本中に店舗を構えるコンビニは、この輪を一気に太くできる場所です。つまり出資で買おうとしているのは、店舗という資産そのものより、毎日そこを通る人の流れなのだと読めます。
ここが少し直感に反するところですが、企業にとって価値があるのは、1回あたりの決済手数料よりも、回数です。1000円の買い物に伴う手数料はごくわずかでも、週に何度も繰り返され、そこにポイントやカード、通信料の請求がつながっていくと、生活の入口を丸ごと押さえたことになります。私たちの買い物という何気ない行動が、企業から見れば途切れない接点の束に見えている、ということです。
持ち帰れる読み方はこうです。「◯◯経済圏」という見出しに出会ったら、誰が誰のどの接点を押さえたのかを地図のように並べてみる。決済、通信、小売、カード、ポイント——どこが埋まり、どこが空いているかが見えると、次にどの業種と組みそうかまで見当がつきます。還元率の派手さは入口の演出で、勝負はその後ろの回数にあります。