デザインは「見た目」ではない
「デザイン」と聞くと、多くの人が「おしゃれな見た目」「装飾」を思い浮かべます。しかし、これはデザインのごく一部です。デザインの本質は、問題解決にあります。このコースでは、身のまわりのモノや仕組みを「デザインの目」で見ることで、芸術とも建築とも違う、日常に密着した創造の営みを読み解きます。当たり前の世界が、新しく見えてくるはずです。
デザイン=目的を形にする
デザインとは、目的を実現するために、形・機能・仕組みを意図的に設計することです。ドアの取っ手、スマホの画面、道路標識、リモコンのボタン配置、Webサイトの構成——これらはすべて、「使いやすくする」「伝わりやすくする」「課題を解決する」という目的のために、デザインされています。
たとえば、ドアの取っ手を考えてみましょう。「押す」ドアには平らな板が、「引く」ドアには握るバーがついていると、人は迷わず操作できます。これは、美しさのためではなく、「どう使うかが、形を見れば分かる」という問題解決のためのデザインです(逆に、押すのか引くのか分からないドアは、デザインの失敗です)。デザインにおいて、美しさは目的そのものではなく、目的に奉仕するもの。使いやすく、伝わり、機能することが、まず求められるのです。建築の「用・強・美」の発想と、通じています。
「なぜこの形?」を問う
デザインの目を持つと、身のまわりのすべてに、「なぜこの形なのか」という問いが立ち上がります。
- なぜ、非常口のマークは、あの走る人の絵なのか(言葉が分からなくても、世界中で伝わるように)
- なぜ、信号は赤・黄・青(緑)なのか(色覚の特性や、視認性を考えた設計)
- なぜ、スマホのアプリは、あの配置なのか(使いやすさや、企業の意図を反映)
- なぜ、この製品は、こんなに使いにくいのか(デザインの失敗、あるいは別の意図)
こうした問いを立てると、そこに込められた意図や配慮、あるいは配慮の欠如が見えてきます。良いデザインは、使う人のことを深く考えた結果です。悪いデザインは、作り手の都合や、考慮不足の表れかもしれません。デザインの目は、当たり前だと思っていた世界を、「誰かが意図して作ったもの」として、新鮮に捉え直させてくれます。
デザイン思考——広がる応用
近年、「デザイン思考」という言葉が注目されています。これは、デザインの発想——使う人を深く理解し、本当の課題を見つけ、試作と改善を繰り返して解決する——を、モノづくりを超えて、ビジネス、サービス、政策、さらには社会課題の解決にまで応用する考え方です。デザインは、もはや専門家だけのものではなく、あらゆる問題解決に通じる、普遍的な思考法として捉えられています。A/Bテストで試して改善する発想も、このデザイン思考と重なります。
ニュースで使う視点
新製品のデザイン、UIの改善、公共サインの見直し、デザインの受賞や炎上——デザインに関わるニュースを読むときは、「これは、どんな目的(問題解決)のためのデザインか」「使う人への配慮があるか」を問うてください。そして、身のまわりのモノを、デザインの目で見てみる。次のレッスンでは、良いデザインの核心——使いやすさ(ユーザビリティ)を掘り下げます。