アズリテ
デザインと日常・ レッスン 2 / 3
人文科学 / 芸術・文学

使いやすさの科学——ユーザビリティ

読了目安 4/灯る概念:

「直感的に使える」の裏側

初めて使うのに、迷わず操作できるモノがあります。逆に、説明書を読んでも使い方が分からないモノもあります。この違いは、どこから来るのでしょうか。答えは、ユーザビリティ(使いやすさ)のデザインにあります。前レッスンで「デザインは問題解決」だと学びました。その中でも、「人が迷わず使える」ことは、デザインの最も重要な目的の一つです。この「使いやすさの科学」を、掘り下げましょう。

良いデザインは、気づかれない

ユーザビリティの逆説的な真実は、良いデザインは気づかれないということです。使いやすいモノは、あまりにスムーズに使えるため、私たちはそこにデザインの工夫があることに気づきません。ドアを迷わず開け、アプリを直感的に操作し、標識を一目で理解する——うまくいっているとき、私たちはデザインを意識しないのです。

デザインの存在に気づくのは、多くの場合、使いにくいときです。「押すのか引くのか分からないドア」「どのボタンを押せばいいか迷うリモコン」「目的の情報にたどり着けないWebサイト」——こうしたとき、私たちは苛立ち、初めて「デザインが悪い」と気づきます。だから、優れたデザイナーの仕事は、しばしば目立たない。透明で、意識されず、ただスムーズに機能する。これは、縁の下の力持ちのような、静かで重要な仕事なのです。

アフォーダンス——形が使い方を語る

ユーザビリティの核心的な概念が、アフォーダンスです。これは、モノの形や見た目が、それをどう使えばよいかを、自然に示唆する性質のことです。

  • 取っ手があれば、握って引きたくなる
  • 平らな板があれば、押したくなる
  • ボタンの形をしていれば、押したくなる
  • スライダーがあれば、動かしたくなる

良いデザインは、この性質を活かして、説明なしに使い方が分かるようにします。前レッスンのドアの例は、まさにアフォーダンスの実践です。逆に、アフォーダンスが誤っていると(引くドアに押したくなる板がついているなど)、人は間違え、迷います。私たちが日々、無数のモノを説明書なしに使えているのは、デザイナーたちが、このアフォーダンスを丁寧に設計してくれているおかげなのです。

人間を理解するデザイン

ユーザビリティのデザインは、突き詰めれば、人間を深く理解することです。人はどう認識し(認知の特性)、どう間違え(認知バイアス)、どんなときに迷うのか。良いデザインは、人間の心理と行動を踏まえて、「人が間違えにくく、迷いにくい」形を作ります。たとえば、重大な操作(削除など)には確認を挟む、間違えても取り返しがつくようにする(元に戻す機能)、といった配慮です。これは、人間の弱さを責めるのではなく、人間の弱さを前提に、それでもうまくいくように設計するという、思いやりのある発想です。ナッジが良い選択を促すのと、同じ精神です。

使いやすさは「誰にとって」か

ユーザビリティを考える上で、重要な問いがあります。「誰にとっての使いやすさか」です。若く健康な人には使いやすくても、高齢者や障害のある人には使いにくいデザインは、多い。だから、より多くの人が使えるデザイン(アクセシビリティ、ユニバーサルデザイン)が重視されるようになっています。文字を大きくできる、色覚に配慮する、音声でも操作できる——これらは、誰も取り残さないという、公正にもつながる発想です。使いやすさは、多様な人々への配慮なのです。

ニュースで使う視点

UIの改善、使いにくさへの批判、アクセシビリティ、ユニバーサルデザイン——ユーザビリティに関わるニュースを読むときは、「これは、人が迷わず使えるための工夫か」「誰にとっての使いやすさか、取り残される人はいないか」を問うてください。そして、日々使うモノの使いやすさ・使いにくさに、意識を向けてみる。次の最終レッスンでは、デザインが社会を変える、より大きな力を見ます。

理解度チェック

全問回答でレッスン完了・概念が灯ります
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Q1「良いデザインは気づかれない」と言われるのはなぜですか?
Q2「アフォーダンス」というデザインの考え方の説明として、最も適切なものはどれですか?