最も身近で、最も見えにくい社会
家族。それは、私たちにとって最も身近な社会です。生まれ、育ち、多くの時間を過ごす場所。あまりに当たり前で、「家族とは何か」と問うことは稀です。しかし、社会学の目で見ると、家族は、時代と文化によって大きく変わってきた、興味深い社会の単位です。このコースでは、この最も身近な社会を、改めて捉え直します。それは、「普通の家族」という思い込みを問い直す旅でもあります。
「普通の家族」は、普通ではない
多くの人が思い浮かべる「普通の家族」——夫婦と子どもからなる核家族——は、実は特定の時代・社会の産物です。歴史や世界を見渡すと、家族の形は、驚くほど多様です。
- 大家族・拡大家族:祖父母、親、子、時に親族まで、多くの世代が一緒に暮らす形。かつての日本や、今も多くの社会で見られる
- 核家族:夫婦と子どもだけの小さな家族。産業化と都市化とともに広まった、比較的新しい形
- 多様な家族:単身世帯、ひとり親家族、子どものいない夫婦、事実婚、そして再婚による家族など
つまり、「家族はこうあるべき」という形は、自然で普遍的なものではなく、社会の仕組みや時代とともに変わってきたのです。現代思想が「当たり前を疑う」ように、家族の「当たり前」も、問い直せます。自分が育った家族の形を「普通」と思い込むと、多様な家族のあり方が見えなくなります。
家族が担う機能
なぜ、どの社会にも家族があるのでしょうか。それは、家族が、社会にとって重要な機能を担ってきたからです。
- 子どもの養育と社会化:次世代を産み、育て、社会の一員として育てる。人間の子どもは、長い養育を必要とします
- 経済的な支え合い:生活の基盤を共有し、支え合う経済の単位
- 心の拠り所:安らぎ、愛情、つながりを提供する、心の基地
- ケア:高齢者、病人、幼い子どもなど、支えを必要とする人の世話(介護など)
これらは、社会が機能するために不可欠なものです。だからこそ、家族の変化は、社会全体に影響します。家族が担ってきた機能が揺らぐと、それを社会がどう補うかが問われるのです。
家族と社会は、鏡である
家族の形は、その社会のあり方を映す鏡です。大家族は、農業を中心とし、家が経済の単位だった社会に適していました。核家族は、産業化で人々が仕事を求めて移動し、都市に住むようになった社会に適していました。つまり、家族の形は、その時代の経済や社会の仕組みと、深く結びついているのです。だから、家族の変化を読むことは、社会の変化を読むことでもあります。次のレッスンで見る「家族の多様化」も、現代社会の変化を映しているのです。
ニュースで使う視点
家族のあり方、世帯の変化、多様な家族、家族政策——家族に関わるニュースを読むときは、「ここで前提とされている『家族』は、どんな形か」「それは、社会のどんな変化を映しているか」を意識してください。次のレッスンでは、現代における家族の変化——多様化するかたちを見ます。