「正社員が当たり前」は永遠ではない
一つの会社に定年まで勤め、年功で賃金が上がる——この「標準的な働き方」は、実は特定の時代の産物です。いま、雇用の形は大きく揺れています。非正規雇用、ギグワーク、リモートワーク、副業。これらのニュースを「個人の生き方の多様化」とだけ読むと、半分しか見えません。もう半分は構造の変化です(個人と社会構造)。
非正規化——選択か、構造か
非正規雇用(パート・派遣・契約社員)の増加は、「多様な働き方を選ぶ人が増えた」と語られがちです。しかし社会学的に見れば、これは企業の人件費戦略でもあります。景気変動に応じて調整しやすく、コストの低い労働力として非正規が使われてきた面が大きい。つまり「選んだ」というより「そういう椅子しか空いていなかった」人も多い。個人の選択の物語(物語の力)の裏で、誰がコストとリスクを負っているかを見るのが構造の視点です。
ギグワーク——保護の空白
スマホのアプリ経由で単発の仕事を請け負うギグワークは、プラットフォーム経済が生んだ新しい働き方です。好きな時間に働ける柔軟さは魅力ですが、問題は「労働者」としての保護から外れやすいこと。最低賃金、社会保険、失業給付(失業を読む)——雇用に伴う安全網の外側に置かれ、リスクが個人に移されます。「彼らは労働者か、独立した事業者か」という線引きが、世界中で裁判や立法の争点になっています。
ニュースで使う視点
働き方のニュースを読むときは、2つの問いを持ってください。この変化で、誰が柔軟さを得て、誰がリスクを負うのか。 そして雇用に付いていた保護(賃金の下限・社会保険・失業給付)は、新しい働き方でも維持されているのか。 テクノロジーと市場が働き方を変えるスピードに、保護の制度が追いつくかどうか——これがこれからの労働ニュースの通奏低音です。
これで「労働と雇用の経済」は修了です。労働市場・失業・賃金・働き方という4つの窓から、雇用ニュースを構造で読めるようになりました。