失業率は「働いていない人の割合」ではない
「完全失業率3%」と聞くと、「働いていない人が3%」と思いがちですが、これは誤解です。統計の定義を知らないと数字を読み違えます(統計の読み方)。
失業率の分母は「働く意思のある人(労働力人口)」で、分子の失業者は「働きたくて求職しているのに職がない人」に限られます。専業主婦(夫)、学生、引退した高齢者は、働く意思がなければ最初から分母に入りません。ここに落とし穴があります。景気が悪くて求職をあきらめた人は、失業者から外れて分母からも消えるため、皮肉にも失業率を下げることがあるのです。だから失業率が改善しても、雇用が本当に良くなったとは限りません。
失業には3つのタイプがある
失業をひとくくりにすると対策を間違えます。経済学は失業を主に3つに分けます。
- 摩擦的失業:転職や新卒の就活の途中で一時的に生じる。ある程度は避けられず、むしろ健全な労働移動の証でもある
- 構造的失業:産業構造や技術の変化で、求められる技能と持っている技能が食い違って生じる。AIによる自動化で仕事が変わるときに起きるのがこれ
- 循環的失業:景気の後退期に需要が落ち込んで生じる。不況とともに増え、好況で減る
タイプが分かれば対策が分かる
この分類が実用的なのは、タイプによって効く対策が違うからです。循環的失業には景気を温める財政・金融政策が効きますが、構造的失業に同じ薬は効きません。技能のミスマッチには職業訓練や教育が必要です。「失業対策」というニュースを読むときは、どのタイプの失業に、どの薬を当てようとしているかを見ると、その政策の当否が見えてきます。
次は、働く人の最大の関心事——賃金が、なぜ思うように上がらないのかを掘り下げます。