1000人で1億人を測る魔法と、その条件
「全国世論調査(回答1052人)」——この人数で1億人の意見を語れるのか、と疑ったことはないでしょうか。答えは「条件付きでイエス」です。その条件とは、対象者が無作為(ランダム)に選ばれていること。無作為なら、統計理論によって「誤差±3%程度」という保証付きで全体を推計できます(標本の偏りの裏返しです)。
逆に言えば、無作為でなければ人数は意味を持ちません。SNSの「100万人投票」は、その話題に関心のある人だけが答えた偏ったサンプルで、1000人の無作為調査に精度で負けます。量は質(無作為性)を代替できない——世論調査リテラシーの核心はこの一文です。
実際の調査には他にも癖があります。電話かネットかで回答者層が変わる。質問文と選択肢の順序が答えを誘導しうる。回答率が下がると「電話に出て答えてくれる人」への偏りが生じる。だから調査会社ごとに水準が違うのは普通で、同じ調査の時系列(前回比)で読むのが基本作法です。
支持率という「権力の体力ゲージ」
では、測られた世論は何をするのか。内閣支持率に法的な効力はありません。しかし政治の現場では、支持率は政治資源として実体的に機能します。
- 高支持率: 難しい政策を押し通す推進力、選挙・解散の好機、党内の求心力
- 低支持率: 与党内の動揺、退陣論、政策の停滞
つまり支持率の報道は、単なる人気の観測ではなく、権力の体力ゲージの公開です。だからこそ各政権は支持率に敏感になり、メディアのアジェンダ設定と世論の相互作用が政治日程を左右します。
読みどころ
支持率ニュースの読み方は3段階です。①手法を見る(調査主体・方法・回答数)。②変化で読む(水準の社外比較ではなく、同一調査の前回比)。③政治への含意を考える(この数字は誰の背中を押し、誰の足を止めるか)。数字の消費者から、数字の読み手へ——それがこのコースの目標です。