世界地図に残る「帝国の影」
アフリカの地図を見ると、定規で引いたような直線の国境がいくつもあります。中南米の多くの国はスペイン語を話し、インドの公用語には英語が含まれ、「先進国」と「途上国」の分布は百年前の「支配する側」と「される側」にかなり重なります。これらはすべて、帝国主義の時代の遺産です。
産業革命(前レッスン)で圧倒的な工業力と軍事力を手にした列強は、19世紀後半、原料の供給地・製品の市場・国の威信を求めて世界を分割しました。20世紀初頭には、地表の大部分がひと握りの帝国の支配下に入ります。1884年のベルリン会議では、ヨーロッパの会議室で、現地の民族や言語の分布とは無関係にアフリカの境界線が引かれました。冒頭の「直線国境」の正体です。
支配を正当化した物語
帝国主義は暴力だけでは維持できません。「文明化の使命」——遅れた人々を文明に導いてやるのだ——という正当化の物語(物語の力)が支配を支えました。人種の優劣を「科学」の装いで語る疑似科学も動員されました。支配の構造はいつも、腕力と物語のセットでできています。
脱植民地化——独立と残された宿題
第二次世界大戦後、植民地は次々と独立します。1960年だけでアフリカの17か国が独立し「アフリカの年」と呼ばれました。しかし独立は、帝国時代の宿題を消してはくれませんでした。
- 恣意的な国境はそのまま国民国家(国民国家の誕生)の枠になり、民族分断と内戦の火種を残した
- モノカルチャー経済(特定の輸出用作物・資源に特化させられた経済構造)は、独立後も価格変動に弱い経済として残った
- 旧宗主国と旧植民地の経済格差は「南北問題」と呼ばれ、いまも国際政治の底流にある
ニュースで使う視点
この歴史は、現代ニュースの読解に直結します。旧植民地諸国が「グローバルサウス」としてまとまって発言力を強めるニュース、資源をめぐる大国の進出を「新しい植民地主義だ」と批判する声、美術館の収蔵品(植民地時代の略奪品)の返還問題、歴史教育をめぐる各国の論争——いずれも「帝国の影」の現在形です。
国際ニュースで対立の構図が分からなくなったら、「この地域の百年前の支配関係はどうだったか」を一度確認してみてください。見えなかった文脈が立ち上がってきます。次のレッスンは、帝国の解体と入れ替わりに世界を二分した冷戦です。