「成長しない世界」が普通だった
現代の私たちは、経済は成長するもの、生活は子や孫の代には良くなっているもの、と何となく考えています(GDPと経済成長)。しかし人類史のほとんどの期間、これは常識ではありませんでした。
農業が始まってから数千年、一人あたりの生活水準はほぼ横ばいでした。豊作の年と飢饉の年が繰り返されるだけで、「今年より来年が良くなる」と期待できる根拠はなかったのです。このパターンを打ち破ったのが、18世紀後半のイギリスに始まる産業革命です。
何が起きたのか——機械・化石燃料・資本
産業革命の中身は、3つの要素の結合として整理できます。
- 機械:糸紡ぎや織布が機械化され、一人の労働者が生み出せる量が桁違いに増えた
- 化石燃料:人力・畜力・水力という「その日の自然エネルギー」から、石炭という「地中に貯金された数億年分のエネルギー」への切り替え。蒸気機関がこれを動力に変えた
- 資本:得られた利益を消費し尽くさず、次の工場や機械に再投資する仕組み。この「利益→投資→さらなる利益」のループこそが資本主義のエンジンです
この三点セットが揃ったとき、経済は歴史上初めて複利的に成長し続けるようになりました。同時に、工場労働と都市化が人々の暮らしを根本から変え、劣悪な労働条件や格差(格差と分断)という新しい社会問題も生まれました。労働運動、社会保障、そして資本主義への対抗思想(社会主義)は、すべてこの変化への応答として登場します。
ニュースで使う視点
現代のニュースは、いまも産業革命が開いた問いの続きを報じています。脱炭素は「化石燃料への依存を200年ぶりに切り替えられるか」という産業革命の巻き直しです(温室効果のしくみ)。AIによる自動化は「機械が人の仕事を奪う」という19世紀からの問いの最新版。成長と分配の論争(成長と分配)も、資本主義が生む富と格差の両方をどう扱うかという、産業革命以来の宿題です。
次のレッスンでは、産業革命で力をつけた国々が世界に何をしたか——帝国主義と植民地の歴史を見ます。