「見れば分かる」——長らく画像と動画は、テキストより信頼できる証拠でした。生成AIはこの前提を壊しつつあります。2026年衆院選では、候補者や支持者を装った偽画像・偽動画が実際に多数出回り、ファクトチェック機関の検証対象の相当部分を占めました。
このニュースの読みどころは、個々の偽画像の巧妙さではなく、構造の変化です。偽情報の「製造コスト」が劇的に下がった一方、拡散の仕組みは変わっていません——SNS時代の情報環境で学んだとおり、シェアを決めるのは真偽ではなく感情です。怒りや驚きを喚起する偽画像は、訂正よりも速く遠くまで届きます。
そして受け手の側には確証バイアスが待っています。自分の支持する側に有利な「証拠」は検証なしに信じたくなり、不利な本物の映像は「これこそAIだ」と疑いたくなる。偽情報は、騙すことだけでなく、本物への信頼を毀損することでも政治に影響します(「嘘つきの配当」と呼ばれます)。
専門家の助言は明快です——「誰でもだまされ得る前提で接する」。個人の眼力ではなく手続きで守る。感情が動いたら一呼吸、発信元と日付を確認、複数の独立したソースで照合、確信がなければ拡散しない。選挙のたびに繰り返されるこの型は、これからの民主主義の基礎体力です。