公正取引委員会が7月14日、独占禁止法違反の疑いで富士電機など3社に立ち入り検査に入りました。セブン-イレブンが全国の店舗向けに数年ごと・都道府県単位で行う、冷蔵冷凍ショーケースの納入業者を決める入札。そこで各社が事前に「この県はA社、隣の県はB社」と受注予定者を調整していた疑いです。
「談合」と聞くと難しそうですが、ゲーム理論の目で見ると構造はシンプルです。本来、入札とは各社が値段を競い合う場です。互いに相手より安く出そうとするので、価格は下がり、発注側は得をする。ところが——全社が「競争するのはやめよう」と我慢し合えれば、みんな高い値段のまま受注できます。これは囚人のジレンマのちょうど裏返しです。囚人のジレンマでは「各自が賢く動くと全員が損をする」。談合では「各自が競争を我慢すると、参加企業だけが得をする」。損をするのは、高く買わされる発注側と、その先の消費者です。
不思議なのは、抜け駆けして安値で総取りすれば1社は儲かるのに、なぜ裏切りが起きにくいのか、という点です。鍵は「一回きりではない」こと。セブンの入札は数年ごとに繰り返されます。今回抜け駆けした会社は、次回に他社から冷遇される。この報復の見込みが協力を支える——談合が崩れずに続く理由であり、同時に発覚しやすい弱点でもあります。
だからこそ社会は、談合を競争を壊す反則として禁じ、公取委が摘発します。摘発と課徴金は、談合という「協力」を割に合わなくするためのルール設計です。ニュースで「談合」「カルテル」を見かけたら、まず「誰と誰が、何を我慢し合えば全員が得をするのか」を探してみてください。参加者には得でも社会には損、という型が見えてきます。