なぜ競争は「善」なのか
「競争は厳しくて疲れる」——個人としては、そう感じることもあるでしょう。しかし、経済において競争は、消費者と社会にとって大きな恩恵をもたらします。そして、その反対にある独占は、しばしば問題を引き起こします。前レッスンで会社を理解したので、今度はその会社が活動する市場の健全さを保つルールを見ましょう。
競争が消費者を守る
競争がなぜ消費者に利益をもたらすのか。仕組みはシンプルです。複数の企業が顧客を奪い合う市場では、企業は生き残るために努力せざるをえません。
- 価格を下げる:他社より高ければ、客は逃げる。だから価格競争が起きる
- 品質を高める:より良いものを提供しなければ、選ばれない
- 新しいものを生む:革新し続けなければ、追い抜かれる
つまり競争は、企業を、消費者のために努力させる圧力なのです。需要と供給が価格を適正化するのも、この競争があってこそ。競争のおかげで、私たちはより安く、より良い商品を手に入れられます。競争は、消費者にとっての味方なのです。
独占の弊害
では、その競争がなくなり、一社が市場を支配したら(独占)どうなるでしょうか。競争の圧力が消えると、企業の誘因が変わります。
- 価格をつり上げる:競争相手がいないので、高い価格を維持できる。消費者は「そこで買うしかない」
- 努力を怠る:品質を高めたり革新したりする必要が薄れる。ぬるま湯に浸る
- 新規参入を妨げる:自らの地位を守るため、新しい競争相手を排除しようとする
その結果、消費者はより高く質の低いものを買わされ、経済全体の活力も損なわれます。だから、市場経済を採る多くの国は、独占禁止の法律を持ち、公正な競争を守ろうとします。競争を守ることは、市場の恩恵を守ることなのです。
デジタル時代の新しい難しさ
現代では、この問題が新しい形で現れています。プラットフォーム企業です。ネットワーク効果——使う人が多いほど価値が増す性質——のために、デジタルの世界では、勝者が総取りに近い独占・寡占が生まれやすい。しかも、これらのサービスは「無料」で提供されることが多く、従来の「価格が高い」という独占の指標が当てはまりません。
だから、巨大IT企業への独占規制は、難問になっています。サービスは便利で無料なのに、何が問題なのか。イノベーションの芽を摘んでいないか、データを独占していないか、言論に影響を与えていないか——価格以外の観点での「競争の健全さ」が問われています。競争政策は、時代とともに進化を迫られているのです。
ニュースで使う視点
企業の合併、独占禁止の調査、カルテル(企業間の価格協定)、巨大IT企業への規制——競争をめぐるニュースを読むときは、「この動きは競争を促すか、損なうか」「消費者や社会にとって、健全な競争が保たれているか」を問うてください。次のレッスンでは、競争が生み出す最大の恩恵——イノベーションを見ます。