「1〜7月の特殊詐欺被害額、2108億円」——数字だけ見ると、去年もおととしも似たような見出しを目にした気がするかもしれません。ですが今回の発表を細かく見ると、詐欺の中身そのものが入れ替わりつつあることが分かります。
警察庁によると、2026年1〜7月の認知件数は2万6051件、被害額は2108億1000万円で、前年同期比では件数が16.6%、被害額が42.9%増えました。内訳を見ると、オレオレ詐欺や還付金詐欺、預貯金詐欺といった昔ながらの手口は軒並み件数が減っています。増えているのは、SNSを通じた投資詐欺(件数+75.6%、被害額+88.6%)やロマンス詐欺、そして警察官をかたる「ニセ警察詐欺」です。ニセ警察詐欺は件数こそ減ったものの、被害額は逆に25.7%増えました。1件あたりの被害が膨らんでいる、ということです。
ここで効いてくるのが社会的影響という視点です。ニセ警察詐欺の典型は、SNSのビデオ通話で偽の警察手帳を見せ、「あなたは資金洗浄事件の関係者だ」などと告げるものだといいます。人は権威ある立場を名乗る相手に従いやすいという心の性質を、電話でなくビデオ通話という「顔が見える」手段で、より巧妙に利用するようになっているのです。
そしてもう一つ大切なのが、統計の読み方です。「詐欺の被害額が増えた」という一行だけでは、何が実際に起きているのか分かりません。件数が減った手口と増えた手口を分けて見て初めて、「昔ながらの騙し方は通用しにくくなり、SNSでじっくり信頼を築く新しい手口に置き換わりつつある」という構造が見えてきます。大きな数字のニュースに出会ったら、その中身を分解して読む——この習慣は、詐欺に限らずあらゆる統計に効きます。