アズリテ
犯罪と社会・ レッスン 1 / 4
社会科学 / 社会・心理

犯罪とは何か——社会が決めるもの

読了目安 4/灯る概念:

犯罪は、生まれつきの「悪」か

「犯罪者」と聞くと、私たちは「生まれつき悪い人間」を思い浮かべがちです。しかし、このコースでは、犯罪を個人の悪としてではなく、社会の現象として捉え直します。犯罪は、社会学の視点で見ると、まったく違った顔を見せます。感情的な非難や恐怖から一歩離れて、「そもそも犯罪とは何か」「なぜ人は罪を犯すのか」「どう罰するべきか」を、冷静に考える力を養いましょう。最初の問いは、根本的です——犯罪とは、何か

何を犯罪とするかは、社会が決める

まず押さえるべき、重要な事実があります。ある行為が犯罪かどうかは、その社会の法や規範によって決まる、ということです。犯罪は、行為そのものに刻まれた固定的な性質ではありません。

歴史や社会を見渡すと、これは明らかです。かつては罪とされた行為が、今では罪でなくなっていることがあります。逆に、昔は問題にされなかった行為が、新たに犯罪とされることもあります(たとえば、環境を汚す行為や、デジタル空間での新しい犯罪)。同じ行為でも、社会や時代が違えば、犯罪とされたり、されなかったりする。

これは、前に神話や規範で見たように、社会が「何を許し、何を罰するか」の線引きをしているということです。犯罪とは、社会がその規範にもとづいて、「これは罰する」と定めた行為の集合なのです。この視点は、犯罪を「絶対的な悪」としてではなく、「社会が作り出す境界」として見る、犯罪社会学の出発点です。

逸脱と、犯罪

ここで、関連する概念を整理しましょう。逸脱犯罪の違いです。

  • 逸脱:社会の規範や期待から外れた行動全般。マナー違反、変わった振る舞い、常識外れの行為なども含む、広い概念です
  • 犯罪:逸脱のうち、法によって禁じられ、刑罰の対象となるもの

つまり、犯罪は、逸脱という広い領域の中の、法的に線引きされた一部です。逸脱のすべてが犯罪ではありません(行儀が悪いことは逸脱でも犯罪ではない)。そして、何を逸脱とし、そのどこからを犯罪とするかは、やはり社会が決めます。

この線引きには、権力も関わります。社会の中で、誰が「何を犯罪とするか」を決める力を持つのか。同じような行為でも、立場によって扱いが違うことはないか。犯罪を考えることは、その社会の価値観と権力の構造を映す鏡を、のぞくことでもあるのです。

「犯罪者」というレッテル

もう一つ、犯罪社会学が明らかにした重要な洞察があります。人が「犯罪者」とされる過程には、社会からのレッテル貼り(ラベリング)が関わる、というものです。

同じ行為をしても、ある人は見逃され、ある人は「犯罪者」として扱われる。そして、いったん「犯罪者」というレッテルを貼られると、その人は社会から排除され、まっとうな道が閉ざされ、かえって犯罪を繰り返しやすくなる——という悪循環(負のフィードバックならぬ悪い自己強化ループ)が起こりえます。犯罪は、個人の内側だけでなく、社会がその人をどう扱うかによっても、形作られるのです。

ニュースで使う視点

犯罪や事件のニュースを読むときは、「なぜこの行為が犯罪とされるのか」「社会は誰を、どんな基準で『犯罪者』としているか」を、一歩引いて考えてみてください。犯罪を、単なる「悪人の所業」としてではなく、社会が作り出す現象として見る視点——それが、恐怖や偏見に流されずに事件を読む力になります。次のレッスンでは、「では、なぜ罰するのか」という、刑罰の根本を問います。

理解度チェック

全問回答でレッスン完了・概念が灯ります
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Q1「何が犯罪とされるかは、社会によって決まる」という見方の説明として、最も適切なものはどれですか?
Q2「逸脱(逸脱行動)」と「犯罪」の関係について、最も適切な説明はどれですか?