アズリテ
数学の歴史・ レッスン 1 / 4
自然科学 / 数学・データ

数はどう生まれたか

読了目安 5/灯る概念:

数学を、物語として読む

数学と聞くと、多くの人が、公式や計算、試験を思い浮かべ、身構えます。しかし、数学は、本来、人類の壮大な発見の物語です。このコースでは、数学を「暗記するもの」ではなく、「人類が、どのように、数・図形・無限といった概念を発見し、発展させてきたか」という、歴史の物語として辿ります。難しい計算は、しません。大切なのは、それぞれの発見が、いかに画期的で、いかに人類の見る世界を変えたかを、味わうことです。まず、すべての出発点——「数」そのものの誕生から始めましょう。

「3」という、抽象の発明

私たちは、「3」という数を、当たり前に使います。しかし、考えてみてください。自然界のどこにも、「3」そのものは、転がっていません。あるのは、「3匹の羊」「3個の石」「3人の人」といった、具体的なモノの集まりだけです。

ここに、人類の、大きな知的飛躍がありました。「3匹の羊」「3個の石」「3人の人」——これらに共通する『3』という性質を、具体的なモノから切り離して、取り出す。羊でも石でも人でもない、純粋な「3」という概念を、つかまえる。これは、極めて高度な抽象化です。

  • 目の前にあるのは、常に、具体的なモノ
  • そこから、「数」という、目に見えない性質だけを、抜き出す
  • この抽象化によって、「3+2=5」のように、モノを離れて、数だけを操作できるようになる

この「数」という抽象概念の発明は、人類が手に入れた、最も強力な考える道具の一つでした。数があるからこそ、私たちは、測り、計算し、記録し、科学を築けたのです。動物も、「多い・少ない」はある程度分かりますが、「3」という抽象を操るのは、人類ならではの能力です。私たちが何気なく使う数は、実は、人類の知性の、輝かしい達成なのです。

数を、書き表す工夫

数の概念が生まれると、次に、それを書き表す必要が生まれました。特に、社会が複雑になり、交易や税、暦の計算が必要になると、大きな数を、正確に記録し、計算する方法が、求められました。ここでも、人類は、偉大な工夫を重ねました。

最初は、単純でした。「一、二、三……」と、印を並べる。しかし、これでは、大きな数を書くのが、大変です。「千」を、千個の印で書くのは、非現実的です。そこで、人類は、様々な記数法(数の書き方)を、発明しました。

そして、その中でも、決定的に重要だったのが、位取り記数法です。これは、前に情報理論で見たのと似た発想で、限られた種類の記号と、位(桁)の組み合わせで、数を表す方法です。

  • 私たちが使う十進法では、0〜9の、たった10種類の記号を使う
  • 同じ「1」でも、置かれる位(桁)によって、意味が変わる(一の位の1、十の位の1、百の位の1)
  • この組み合わせで、どんなに大きな数でも、簡潔に表せる

この位取り記数法は、驚くほど効率的です。10種類の記号だけで、無限に大きな数を書ける。そして、計算も、格段にしやすくなりました(筆算ができるのは、この仕組みのおかげです)。私たちが当たり前に使うこの仕組みは、実は、人類が長い時間をかけて到達した、偉大な発明なのです。そして、この仕組みが完成するには、次のレッスンで見る、ある特別な数——「ゼロ」の発明が、必要でした。

数が、文明を支えた

数と記数法の発明は、文明の発展を、根底から支えました。前に食の文明で見たように、農耕が余剰を生み、社会が複雑になると、数える必要が、爆発的に増えます。

  • 収穫や在庫を、数える
  • 税を、計算する
  • を作り、季節を予測する
  • 土地を測り、交易の計算をする

数がなければ、これらは、できませんでした。数学は、しばしば「役に立たない抽象的な学問」と思われがちですが、その出発点は、極めて実用的でした。人々が、生きるために、社会を運営するために、数を必要とした。そこから、数学は生まれ、発展したのです。この、実用から始まり、やがて抽象的な探究へと深まっていく——それが、数学の歴史の、大きな流れです。次のレッスンでは、その抽象的な探究が、古代ギリシャで大きく花開いた様子を見ます。

ニュースで使う視点

統計、データ、計算、AIといった、数を扱うあらゆる話題の根底には、この「数」という人類の発明があります。数字に触れるときは、それが、人類の壮大な知的営みの上に成り立っていることを、時に思い出してみてください。数を、当たり前の道具としてだけでなく、偉大な発明として捉える視点は、数学への見方を変えてくれます。次のレッスンでは、証明という、数学の核心を生んだ、ギリシャの幾何学を見ます。

理解度チェック

全問回答でレッスン完了・概念が灯ります
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Q1人類が「数」という概念を獲得したことが、大きな知的飛躍だったとされるのはなぜですか?
Q2数字の「位取り記数法(たとえば十進法で位によって数を表す方法)」が、数学の発展にとって重要だったのはなぜですか?

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