アズリテ
演劇と舞台の見方・ レッスン 4 / 4
人文科学 / 芸術・文学

現代の舞台と社会

読了目安 6/灯る概念:

映像の時代の、舞台

演劇のコース、最後は、現代を考えます。映画、テレビ、そして無数の動画配信——私たちは、映像の物語に、囲まれています。手軽で、安く、いつでもどこでも見られる映像。それなのに、なぜ、人々は、今も劇場へ足を運び、演劇を見るのでしょうか。そして、演劇は、現代社会の中で、どんな役割を果たしているのでしょうか。これまで学んだ演劇の本質を踏まえ、映像の時代における、演劇の価値と、社会との関わりを、考えます。それは、「生の体験」の価値を、問い直すことでもあります。

なぜ、演劇は生き続けるのか

映像技術がこれほど発達し、手軽な娯楽があふれる中でも、演劇は、消えていません。むしろ、独自の価値を持つものとして、生き続けています。なぜでしょうか。答えは、第1レッスンで見た、演劇の本質——生(ライブ)の体験——にあります。

  • 代えがたい、生の迫力:生身の身体が、目の前で演じる。その息づかい、緊張、エネルギーは、映像では、決して完全には伝わりません。同じ空間にいるからこその、直接的な体験です
  • 一回限りの、かけがえのなさ:録画された映像は、いつでも同じものを再生できます。しかし、演劇は、その日、その時の上演が、唯一のもの。「今、ここでしか見られない」という、かけがえのなさがあります
  • 共同体的な体験:これが、とりわけ重要です。演劇は、同じ空間に集った人々が、同じ瞬間に、感情を分かち合う体験です。一人でスマホで見る映像とは違い、大勢が、同じ舞台に、笑い、泣き、息を呑む。この共同体的な体験は、孤立が進む現代において、むしろ、貴重なものになっています

つまり、演劇は、映像が提供できない、生身の、一回限りの、共に分かち合う体験を、提供しているのです。デジタルで孤立しがちな時代だからこそ、人々は、この「生で、共に」の体験を、求めるのかもしれません。この価値は、演劇だけでなく、コンサートや、スポーツ観戦といった、あらゆる「ライブ体験」に、共通します。

演劇と、社会

演劇は、単なる娯楽ではありません。歴史を通じて、演劇は、社会と、深く関わってきました。現代でも、その役割は、生きています。

  • 社会を、問いかける:演劇は、社会の問題——差別、貧困、戦争、権力——を、舞台で描き、観客に問いかけます。前に喜劇で見た風刺の力も、その一つです。物語を通じて、人々に、考えさせ、感じさせる
  • 声を、与える:これまで声を持たなかった人々——社会の少数派、周縁に置かれた人々——に、演劇は、表現の場と、声を与えることができます
  • 人々を、結びつける:地域の演劇活動は、人々を結びつけ、共同体を育てます。共に作り、共に見ることが、つながりを生む
  • 対話を、生む:演劇は、観客に、様々な立場や人生を体験させ他者への想像力を育てます

このように、演劇には、社会を映し、問い直し、人々をつなぎ、時に社会を動かす力があります。歴史上、演劇が、社会変革の運動と結びついたことも、少なくありません。演劇は、前に社会運動で見た、物語と象徴の力を、生の身体で、直接、人々に届ける営みなのです。

生の体験の、これから

最後に、より大きな視点を。演劇が体現する「生の体験の価値」は、実は、デジタル化が進む現代を考える上で、重要な問いを投げかけます。何でも、画面越しに、手軽に体験できるようになった時代に、「生で、その場で、身体で、共に」体験することの価値とは、何なのか。

  • VRやメタバースが、どれほど発達しても、生身の身体が同じ空間にいることの価値は、残るのか
  • 効率や便利さでは測れない、「その場にいること」の意味とは何か
  • 人と人が、直接、感情を分かち合うことの、かけがえのなさ

演劇は、二千年以上、この「生の、身体の、共同の体験」を、守り続けてきました。だから、演劇について考えることは、単に一つの芸術について考えることを超えて、人間にとって、生の体験とは何かという、大きな問いへと、私たちを導くのです。映像とデジタルの時代に、演劇が生き続けることの意味を問うことは、私たち自身が、何を大切にして生きたいのかを、問うことでもあります。

コースのまとめ

このコースでは、演劇とは何か悲劇と喜劇世界の多様な演劇、そして現代の舞台と社会を学びました。演劇は、生身の身体で、その場で一回限りに物語を生きる、人類最古の芸術の一つです。映像の時代にも、その「生の、共同の体験」という価値は、色あせません。演劇を味わう目を持つことは、舞台を深く楽しむだけでなく、物語の力、生の体験の意味、そして人間そのものを、より深く見つめる力になるのです。

ニュースで使う視点

演劇、舞台芸術、ライブイベント、そして「生の体験」の価値に関わる話題に触れるときは、「これは、映像では代えがたい、生身の共同体験だ」という視点を思い出してみてください。デジタル化が進むほど、「生で、共に」体験することの価値は、問い直されます。演劇の視点は、その大きな問いを、考える手がかりになります。

理解度チェック

全問回答でレッスン完了・概念が灯ります
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Q1映画や動画配信が発達した現代でも、演劇が独自の価値を持ち続けているのはなぜですか?
Q2演劇が「社会と関わる」あり方として、適切なものはどれですか?

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