関税を上げるというニュースは、しばしば「どちらが得か・損か」の勝ち負けで語られます。しかし教養として読むなら、当事者の善悪ではなく、保護と自由化のトレードオフという構造に視点を固定するのが有効です。
まず、なぜ国は貿易するのか。各国が相対的に得意な財に集中して交換すれば、全体の生産は増えます(なぜ国は貿易するのか)。自由な貿易は、この効率の恩恵を分かち合う仕組みです。関税を上げるとは、その恩恵の一部を手放してでも、国内産業を守ることを選ぶ判断にほかなりません。安い輸入品におされる自国の産業(今回は鉄鋼)を守るか、輸入に頼る川下の企業や消費者の負担を抑えるか——どちらを立てても、もう一方が痛む。これがトレードオフです。
次に、なぜ他国にまで及ぶのか。ここで効くのが相互依存の視点です(貿易と相互依存)。特定の国の安価な輸入を抑える狙いの措置でも、貿易は網の目のようにつながっているため、無関税の輸入枠という形をとれば、枠を共有する第三国の輸出にも波及します。日本はEUとEPAを結び関税ゼロを取り決めていた——だからこそ、いったん結んだルールと、あとから加わる措置とのあいだの緊張が問題になります。
読み解きの型はこうです。関税のニュースは、「誰を守り、そのコストを誰が負うのか」で読む。守られる産業の裏側には、必ずコストを負う別の誰かがいます。そして、いったん結ばれた貿易のルールも、国内産業への圧力が高まれば見直しの圧力にさらされる——自由化と保護のあいだの振り子は、繰り返し戻ってきます。