自分の声を、会ったこともない誰かが勝手にまねて、動画に乗せて稼いでいる——生成AIは、それを数分で可能にしました。今回、法務省の検討会が大筋でまとめた報告書案は、こうした無断利用に「待った」をかけうる、と初めて整理したものです。ポイントは、人の声も肖像と同じように「パブリシティー権」などで守られうると認めた点にあります。
生成AIは、実在する声のサンプルから、本人が言っていない言葉まで“それらしく”作り出せます。ここで効くのがパブリシティー権という見方です。これは、有名人の名前・姿・声が持つ「お金を生む価値」を、本人に無断で使われないよう守る権利。だから報告書は、保護されるかどうかの分かれ目を「収益目的かどうか」に置きました。人格そのものというより、人格に貼りついた財産的な値打ちを守る、という発想です。
もう一つ見落とせないのは、これが刑罰の話ではなく民事の話だということ。国が犯人を罰するのではなく、傷つけられた本人が「損害賠償を払え」「その投稿を消せ」と求められるようにする、という筋です。声の権利は裁判所が判断した前例がなく、線引きが曖昧でした。技術が先に走り、法の物差しが後から追う——その追いつきの一手が、今回の整理です。
持ち帰れる読み方はこうです。新しい技術が何かを「勝手に作れる」ようにしたニュースを見たら、「誰の、どんな価値が、無断で使われたのか」を探してください。守るに値する価値が見つかれば、法はやがてそこに線を引きにきます。声・顔・書き癖・作風——AIが複製できるものが増えるほど、この問いは何度でも戻ってきます。