大気中のCO2が2年で大きく跳ね上がった——そう聞くと、「人間がそれだけ多く燃やしたのだろう」と考えたくなります。ところが国立環境研究所が衛星「いぶき」のデータから突き止めた犯人は、そこではありませんでした。化石燃料の排出量が急増したのではなく、陸の生態系がCO2を吸い込む力が落ちたことが主因だ、というのです。
ここを読み解くには、気候を「アクセルとブレーキ」で見るのが早い。人間の排出がアクセルなら、森林や土壌がCO2を吸う働きはブレーキです。ふだんは、出たCO2の一部を自然が吸い戻してくれている。今回はそのブレーキが緩んだ。追加で大気に残ったCO2は、熱帯から22.2億トン、北半球中高緯度から8.4億トン(炭素換算)。北半球では、気温が上がったことで植物の呼吸が増え、光合成による吸収が抑えられたのが効いた、と分析されています。
怖いのは、これがフィードバックの顔をしていることです。温暖化が進む→暑さで吸収源が弱る→大気にCO2が多く残る→さらに温暖化が進む。変化がみずからを強めていく「正のフィードバック」の形です。人間が出す量を仮に一定に保っても、自然のブレーキが弱れば濃度は上がりうる。だからこの発見は、「排出を減らす」だけでなく「吸収源を守る」ことの重みを突きつけます。
持ち帰れる読み方はこうです。気候のニュースを見たら、「アクセル(排出)」だけでなく「ブレーキ(吸収)」がどうなっているかを必ず一緒に見てください。そして「この変化は、自分をさらに強める向きに働かないか」と問う癖をつける。フィードバックが見えるようになると、気候だけでなく、経済でも人口でも、暴走と安定の分かれ目が読めるようになります。