すばる望遠鏡が2016年3月、まったく別の目的で撮影した画像に、偶然一つの彗星が写り込んでいました。国立天文台と京都産業大学は2026年8月25日、この公開アーカイブ画像を精査した結果、土星より遠くにあった「ネウイミン彗星」の核を、コマ(彗星特有のもやを帯びた大気)がない状態で捉えていたと発表しました。
注目すべきは撮影のタイミングです。太陽・彗星・地球がほぼ一直線に並ぶ「衝」という配置では、天体が真正面から光を受けて普段より強く輝きます。彗星核をコマなし・衝の条件で地上から観測できる機会はきわめて限られており、今回が世界初の成功例になりました。結果は意外なものでした。彗星の核は色や反射率だけを見ると小惑星に似ていても、衝での増光ぶりは予想を大きく超え、反射率の高いタイプの小惑星に匹敵するほど強かったのです。「彗星も小惑星も似たような岩石質の天体だろう」という素朴な予想は、この観測によって見直しを迫られました。
これは科学的方法の分かりやすい実例でもあります。予想と食い違うデータが出たとき、それを無視せず「なぜ違うのか」を考え直すところから理解は更新されていきます。しかも今回のきっかけは新しい望遠鏡ではなく、13年近く前に撮って公開されていた画像でした。過去のデータは、探し直す人がいる限り、新しい発見を眠らせたまま待っています。