「AIで雇用が大幅に減っているという裏付けはされていない」——厚生労働省が2026年9月中の公表に向けまとめた2026年版労働経済白書案は、こう分析しています。ところが同じ白書案は、米国の事例としてソフトウェア開発やカスタマーサービス部門で雇用減につながった例も紹介し、「創出、喪失両方の事例がある」とも述べているのです。
一見すると矛盾のように聞こえます。しかし自動化が仕事に与える影響を考えるときは、「全体として増えるか減るか」を一つの答えで求めるより、「どの仕事が代替され、どの仕事が新しく生まれるか」という中身の入れ替わりで見るほうが実態に近づきます。ある企業では特定の業務がAIに置き換わって人員が減る一方、AIを扱う新しい事業や職種が生まれて別の場所で雇用が増える——労働市場は、こうした増減が同時並行で起きる場所です。白書案が対応策として「円滑な労働移動」と「リスキリング」の支援を挙げているのも、仕事の総数そのものより、人がどれだけこの入れ替わりについていけるかを課題と見ているからでしょう。
AIのニュースに触れるときは、「奪う」「作る」のどちらか一方の見出しに引っ張られず、両方が同時に起きている前提で、自分に近い仕事がどちらに近いかを考えてみると、白書の一歩先を読めます。