「AI」と聞くと、多くの人はChatGPTのように文章や画像を生み出すAIを思い浮かべます。けれど今回20社が連合を組んで実用化を目指すのは、それとは種類の違う「フィジカルAI」です。設計図から作業手順を自ら組み立て、実際に工作機械を動かして金属やセラミックスを切削する——ロボットが物理世界を捉えて動く仕組みそのものです。生成AIが扱うのは言葉や画像という「情報」ですが、フィジカルAIが扱うのは重さも硬さもある「物」。狙った通りに機械を制御できなければ、失敗がそのまま部品の破損や事故につながります。
もう一つ興味深いのは、この挑戦を1社ではなく約20社の連合で進めている点です。国産AIを提供するのは金沢のアルム、セラミックス切削のノウハウは京セラ、工作機械の実運用は神戸製鋼、クラウドや金融面は日本マイクロソフトや双日グループが担う——それぞれが最も得意な持ち場に専念し、足りない部分を他社の強みで補い合う分業の形です。フィジカルAIの実用化には、AIのアルゴリズムだけでなく現場の加工技術や機械の癖といった、一社では抱えきれない知識が必要になるからでしょう。
自動車や半導体製造装置向けの大型部品加工という具体的な現場から実用化を進める今回の取り組みは、自動化と仕事の未来を考えるうえでも、実例の一つになりそうです。