「政府が名指しで申し入れる」と聞くと、強引な印象を持つかもしれません。でも実際の経緯を見ると、むしろ逆です。核のごみ(高レベル放射性廃棄物)の最終処分地選定は、これまで自治体からの立候補を待つ方式でした。ところが2002年の公募開始から20年以上たっても、実際に調査を受け入れたのは北海道の2町村と佐賀県の1町だけ。立候補がまったく広がらなかったため、政府はやむを得ず、自治体側へ直接働きかける方式に切り替えています。
なぜ立候補が広がらないのか。ゲーム理論で世界を読むという見方で読むと分かりやすくなります。処分地は日本全体に必要な施設ですが、実際に受け入れるコスト——住民の不安や、合意形成にかかる労力——は、引き受けた地域だけが背負います。恩恵は全員が受けるのに、負担は一部だけが引き受ける。この非対称がある限り、「誰かがやってくれるはず」という空気が生まれやすいのです。
最大20億円の交付金という誘因があっても、常陸大宮市の鈴木市長が語ったのは即答ではなく「市議会の話も聞いて」という言葉でした。処分地を最終的に決めるのは国ではなく、地方自治の仕組みのもとにある自治体自身です。国はあくまで「申し入れる」ことしかできません。