アズリテ
民族とナショナリズム・ レッスン 2 / 4
社会科学 / 国際

ナショナリズムの誕生

読了目安 5/灯る概念:

「国民」という意識は、新しい

前レッスンで、民族は作られる面があると見ました。同じことが、ナショナリズム——「国民」という意識と、国家への帰属や愛着——にも、当てはまります。私たちは、「自分は◯◯国民だ」という意識を、当たり前のものと感じています。しかし、驚くべきことに、こうした国民意識は、比較的新しく、主に近代になって生まれ、広まったものなのです。このレッスンでは、ナショナリズムがいつ、どのように生まれたのかを見ます。それを知ることは、ナショナリズムを、前に見た「自然で永遠のもの」ではなく、「歴史的に作られたもの」として、冷静に捉える鍵になります。

近代以前、人々は何に属していたか

現在のような「国民」という意識が、近代の産物だとすれば、それ以前、人々は、何に帰属意識を持っていたのでしょうか。近代以前、多くの人々にとって、「同じ国民」という意識は、希薄でした。人々の帰属意識の中心は、別のものでした。

  • 身近な地域:自分の村、町、地方。遠く離れた「同じ国」の人より、隣人のほうが、はるかに身近だった
  • 宗教:同じ信仰を持つ者、という帰属
  • 身分:貴族、農民といった、身分による区分
  • 王や領主への忠誠:「国民」としてではなく、特定の支配者に仕える者として

つまり、「フランス国民」「日本国民」といった、広い範囲の人々を「同じ仲間」とする意識は、当たり前ではなかったのです。遠く離れた、会ったこともない何百万人もの人々を、「同じ国民、同じ仲間」と感じる——これは、実は、特別な想像力を必要とすることなのです。ナショナリズムは、こうした「想像された共同体」を作り出す、近代の営みでした。

何が、国民意識を作ったのか

では、なぜ近代になって、「国民」という意識が、広まったのでしょうか。いくつかの要因が、直接会うことのない広い範囲の人々に、「われわれは同じ国民だ」という意識を、育てました。

  • 共通の言語(国語):バラバラだった地域の言葉を、統一した「国語」が普及した。同じ言葉を話すことが、「同じ国民」という感覚を育てた
  • 学校教育:すべての国民を対象とする教育が、共通の歴史、共通の価値観、共通の「国民の物語」を、人々に教え込んだ
  • メディア:新聞などが、同じ情報を、広い範囲の人々に届けた。人々は、同じニュースを読み、「同じ共同体の一員」だと感じた
  • 国民国家という枠組み:近代に成立した、明確な国境を持つ国家が、「その国の国民」という枠を、制度的に作り出した

これらが組み合わさって、ナショナリズムは、急速に広まりました。前に日本思想で見た、日本の近代化の中でも、まさにこうしたプロセスを通じて、「日本国民」という意識が、形作られていきました。ナショナリズムは、自然に湧き上がったのではなく、教育やメディアや制度を通じて、意図的にも育てられたのです。

ナショナリズムの、光と影

ナショナリズムには、前にスポーツで見たように、光と影の両面があります。ここでも、どちらか一方だけを見ないことが、大切です。

光の面:

  • 広い範囲の人々に、一体感と連帯をもたらした。見知らぬ者どうしが、「同じ国民」として、助け合える
  • 民主主義や、国民国家の形成を支えた。「国民」が、政治の主体になった
  • 植民地支配からの独立運動の、原動力にもなった

影の面:

  • 排他性を生む。「われわれ国民」の意識は、しばしば、「よそ者」への排斥や、偏見につながる
  • 戦争や、他民族への抑圧を、正当化する道具にもなった
  • 前に日本思想で見たように、行き過ぎたナショナリズムは、悲劇を招いた

ナショナリズムは、人々を結びつける強力な力であると同時に、分断と対立を生む危うさも、併せ持っています。この両面を理解することが、次のレッスンで見る民族紛争を、冷静に読み解く土台になります。

ニュースで使う視点

愛国心、国民意識、ナショナリズムの高まりに関わるニュースに触れるときは、「この国民意識は、どう作られ、育てられてきたか」「一体感という光と、排他性という影の、どちらが現れているか」を考えてみてください。ナショナリズムを歴史的に捉える視点が、現代の政治現象を、冷静に読み解く力になります。次のレッスンでは、民族とナショナリズムが、紛争へと転じる仕組みを見ます。

理解度チェック

全問回答でレッスン完了・概念が灯ります
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Q1「ナショナリズム(国民意識)」の誕生について、歴史的に適切な理解はどれですか?
Q2ナショナリズム(国民意識)の広まりを後押しした要因として、適切なものはどれですか?

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