国立天文台や愛媛大学、早稲田大学などが参加する国際チームが、生まれて間もない宇宙にかがやく「クェーサー」を31個見つけた。クェーサーとは、銀河の中心にある超大質量ブラックホールに大量のガスが吸い込まれるとき、その周りが猛烈に明るく光る天体だ。うち2個は、宇宙が誕生してから約6億7000万年後、約131億光年かなたにあった。これまでに知られたどのクェーサーよりも遠い、最遠記録の更新である。
「遠い」という言葉が、天文学では独特の意味を持つ。光の速さは有限だから、131億光年かなたの光は131億年かけて地球に届く。いま私たちが見ているのは、その天体の131億年前の姿だ。遠くを見ることは、昔を見ること——望遠鏡は空間をのぞくと同時に、時間をさかのぼる道具でもある。最遠のクェーサーは、宇宙がまだ幼かった頃の実物写真なのだ。
ここに一つの謎がある。銀河の中心のブラックホールが太陽の何億倍もの重さに育つには、ふつう長い時間がかかると考えられてきた。それがこんなに早い時期に見つかると、「どうやってそんなに速く育ったのか」という宿題が生まれる。観測が理論の予想を追い越すとき、科学は答えを出すより先に、新しい問いを手にする。今回の発見は、欧州の宇宙望遠鏡「ユークリッド」で広く候補を探し、日本の「すばる」で詳しく確かめる連携から生まれた。宇宙の始まりを問う営みは、一台の望遠鏡ではなく、役割の違う装置と多くの人の分業で少しずつ前へ進んでいる。