「今年いちばんの暑さ」というニュースは、毎年のように届きます。だからこそ、単発の記録に驚くだけで終わらせず、傾向として読む目が要ります。
太宰府の39.3℃は、その日の全国最高でした。ただ、一日の最高気温は高気圧の張り出しや風向きしだいで大きく振れます。大事なのは点ではなく線——気候データを読むときは、「その一日が暑かったか」より「猛暑日が起きる頻度がどう変わってきたか」を見ます。近年、猛暑日の日数はじわじわ増える傾向にあり、一回の記録更新はその長い線の上の一点として重みを持ちます。
そして暑さは、もう「我慢」で片づく問題ではなくなりつつあります。気温が体温を超える日には、努力や根性では体を守れません。ここで効くのが適応という考え方です。原因を減らす「緩和」とは別に、すでに来ている暑さに「備える」一手——日中の外出を避ける、無理に動かない、涼しい場所を確保する。個人の心がけだけでなく、学校や職場、街のつくりまで含めて備えるのが適応です。
なぜここまで暑いのか、というしくみの面では、大きな高気圧が居座って晴天が続き、日ざしが地面を熱し続けることが効いています。ピークが数日先と予想できるのも、この大気の流れが読めるからです。
持ち帰れる読み方はひとつ。「観測史上」「今年最多」という言葉に出会ったら、それが「一日の記録」なのか「頻度の傾向」なのかを分けて聞くことです。前者には運も混じりますが、後者は備えを促すサインです。この一問があれば、次の猛暑ニュースも、台風や大雨の「これまでにない」も、落ち着いて重みを測れます。