2026年に入り、麻疹(はしか)の患者が増えている。上半期だけで累計は500人を超え、過去10年で最も多かった年に迫るペースだ。数字だけ見ると「流行が戻ってきた」で終わってしまうが、教養の視点で見ると、この出来事には二つの読みどころがある。
一つは、麻疹の桁外れの伝わりやすさだ。麻疹ウイルスは、免疫を持たない人がそばにいると平均で十数人にうつるとされる。感染が一定の割合を超えて広がり始めると、患者数は足し算ではなくかけ算で膨らむ。序盤の「まだ数十人」が、あっという間に数百人になるのはこのためだ。指数的な増え方は最初ゆるやかに見えるので、気づいたときには広がりきっていることが多い。
もう一つが集団免疫という考え方だ。麻疹のように伝わりやすい病気では、社会の95%ほどがワクチンなどで免疫を持っていないと、流行の連鎖が止まらない。裏を返すと、接種率が「あと数%」下がるだけで、守りの壁に穴が空く。今回、患者が若い世代や都市部に多いのは、接種の谷間や人の密集と重なっているからだと考えられる。
だから麻疹の流行は、個人の不注意の話に見えて、実は社会全体でどう守るかという問題だ。「自分が打つ」ことが「打てない誰か」を守る壁の一枚になる——この見方は、次にどんな感染症のニュースが来ても効く読み方になる。