「なぜ国が、民間の工場に1590億円も出すのか」——このニュースは、その一点で読めます。2026年7月14日、経済産業省は、イスラエルの半導体メーカーが富山県魚津市と新潟県妙高市で進める工場計画に、最大1590億円を補助すると発表しました。作られるのは、光で情報を伝える「光電融合」という次世代技術に欠かせない半導体です。
ふつうの経済の理屈なら、どこで作るかは企業が決め、安く作れる場所に任せればいい。それでも国が巨費を出すのは、効率とは別の物差しが働いているからです。それが経済安全保障です。
半導体は、世界中で分業して作られています。分業は効率がいい反面、どこか一か所が止まると全体が止まる、という弱点(依存の脆弱性)を抱えます。もし供給が特定の国や地域に偏っていると、災害や対立で流れが途絶えたとき、車も家電も作れなくなる。今回、政府は半導体を「特定重要物資」に指定し、その安定供給を確保するために補助を出す、という形をとりました。効率で最適な立地よりも、「途絶えても困らない」状態を優先したわけです。
もちろん、ただではありません。補助金の原資は税金であり、どの物資を「重要」と決め、どの企業をどれだけ支えるかは、政策の選択そのものです。ここには必ずトレードオフがあります。効率を取れば脆さが残り、安心を取ればコストがかかる。どちらか一方だけが正しい、という話ではありません。
持ち帰れる読み方はこうです。国が特定の産業に大金を出すニュースを見たら、「効率の話か、それとも安全保障の話か」を見分けてみる。答えはたいてい、グローバル分業の便利さと、依存の危うさ、そのどちらを重く見るかという綱引きに行き着きます。この構図は、エネルギーでも食料でも、これから何度も出会うはずです。