選挙のときの偽情報やなりすましにどう向き合うか——改正された二つの法律(公職選挙法と情報流通プラットフォーム対処法)が成立した。SNS事業者に選挙への悪影響を減らす対策を義務づけ、年に一度その結果を公表させる。AIで作った画像や動画には「AI利用」の明示を求める。ニュースは「規制強化」と一言でまとめがちだが、どこを規制したのかを見ると、この改正の設計思想が見えてくる。
真っ先に気になるのは「表現の自由が狭まるのでは」という点だろう。ここに一つ、押さえておきたいトレードオフがある。有害な情報を抑えようとすれば、正当な言論まで巻き込む危険がある。逆に何もしなければ、偽情報が投票先の判断を歪めかねない。どちらにも副作用があり、双方を完全に満たす一点は存在しない。
今回の改正が選んだのは、投稿を一件ずつ国が裁くやり方ではない。事業者に「悪影響を軽減する仕組みを持て、そしてその中身を公表せよ」と手続きを課す形だ。これはEUが先に採った発想に近い。何を言ってよいかを直接線引きするのではなく、巨大な情報の場を運営する側に、リスクを下げる責任と説明を負わせる。デジタル時代の民主主義を、内容の検閲ではなく場の設計で守ろうとしているわけだ。
だから情報規制のニュースは、『中身を裁いているのか、仕組みを問うているのか』で読み分けると芯を外さない。同じ「規制」でも、この二つはまったく別のことを意味する。次に「SNS規制」の見出しを見たら、その一点を確かめてみてほしい。