JAXAが、再使用型ロケットの実験機「RV-X」を秋田・能代で打ち上げ、着陸させた。高さ11メートルほどまで上がり、少し横に動いて降りてくる——数字だけ見れば地味な飛行だが、この「降りてくる」ことにこそ意味がある。ロケットを一度使って捨てるのではなく、また使う。その一点が、宇宙開発の経済を根っこから変えるからだ。
これまでロケットは、基本的に使い捨てだった。何百億円もの機体を一回の打ち上げで海に落とす。飛行機を一回のフライトごとに廃棄していたら運賃がどうなるかを想像すれば、この重さがわかる。機体を回収して整備し、また飛ばせれば、一回あたりのコストは大きく下がる。米スペースXの「ファルコン9」がこの再使用を実現し、打ち上げの値段を塗り替えてきた。日本が追うのは、この構造転換だ。
面白いのは、その挑み方だ。RV-Xはいきなり宇宙を目指さない。低い高度で上がって降りる、を繰り返して技術を確かめる。イノベーションは天才のひらめきで一足飛びに起きるより、小さな実験を積み重ねて「作り直しの費用」を下げていく地道な過程であることが多い。技術がコストを変えた歴史を振り返っても、世界を変えたのは新発明そのものより、それを安く繰り返し使えるようにした工夫だった。
だから技術のニュースは、『何ができたか』だけでなく『何のコストが下がるのか』で読むと、その本当の重みが測れる。RV-Xの短い飛行は、宇宙が「特別な国家事業」から「使い回せる乗り物」へ変わっていく、その入り口の景色なのだ。