民間企業に義務づけられる障害者の法定雇用率が、7 月から 2.5% から 2.7% に引き上げられた。対象は従業員 37.5 人以上へ広がり、達成できない企業(常用労働者 100 人超)は不足 1 人あたり月 5 万円の納付金を納める。数字の変更に見えるこのニュースは、「働く場は市場に任せて生まれるのか」という大きな問いにつながっている。
出発点は労働市場の性質だ。賃金と雇用は需要と供給で決まるが、採用の判断をすべて企業に委ねると、条件の不利な人の働く機会は偏って生まれにくい。市場に任せるだけでは望ましい結果に届かない——この「市場の失敗」を補うために、国は最低限の割合を割り当てて雇用を制度でつくり出そうとする。その根っこには、働く機会の保障を国に求める社会権という考え方がある。
もう一つ読みどころなのが、納付金という仕組みだ。義務を満たさない企業に費用を負わせて雇用への誘因をつくり、集めた資金は多く雇う企業への調整金や設備の助成に回す。よくできた設計だが、「お金を払えば雇わなくてよい」という抜け道にもなりうる。どんな政策にも効果と代償の両面がある。この割当と納付金の組み合わせを、国が暮らしを支える仕組みの一つとして眺めると、「公平な社会をどう設計するか」という論点が見えてくる。