中国商務省が「過剰生産能力」批判への反論をまとめた立場文書を出しました。一見すると難しい通商の話ですが、芯にあるのは「同じ事実を、どちらの言葉で呼ぶか」という、とても人間くさい綱引きです。
事実そのものは、おおむね一つです。中国の工場が、EVや太陽光パネルなどを大量に、安く作り、世界へ輸出している。この同じ光景を、安く買える消費者や輸出で潤う側は「競争力」と呼び、同じ製品と競う国内メーカーやその雇用を守りたい欧米は「過剰生産能力(作りすぎ)」と呼びます。中国側は文書で「過剰は市場経済で常に起きる動的な現象だ」「自国は消費大国でもある」「設備稼働率は74.4%で異常ではない」と主張しました。どちらの言い分にも理屈はあります。ここで大事なのは、どちらが正しいかを急いで決めることより、名づけに立場がにじむと知っておくことです。
これはフレーミング——同じ出来事を、どの枠で切り取って見せるか——の典型です。「立場文書」とは、議論の土俵となる言葉そのものを自分に有利に定義しようとする試みでもあります。だからこそ、発表する側の主張をそのまま受け取るのではなく、反対側がなぜ別の言葉を使うのかまで見ると、論争の全体像がつかめます。
持ち帰れる読み方を一つ。ある国が「安く輸出できる」というニュースを読んだら、その安さは得意分野ゆえの実力(比較優位)なのか、補助金など政策で下駄をはかせたものなのかを問うてみてください。前者なら貿易の自然な利益、後者なら「公平な競争ではない」という批判の火種になります。安さの出どころを見分けられると、「過剰生産」をめぐる各国の言い分が、ぐっと立体的に読めるようになります。