輸出額11兆5,118億円、輸入額12兆1,463億円。ともに比較可能な1979年以降で過去最大を更新したのに、貿易収支は6,345億円の赤字で3カ月連続——というのが2026年7月の貿易統計(財務省、8月20日発表)です。「過去最大」なのに「赤字拡大」という、一見矛盾した数字の裏には、原油調達をめぐる大きな地殻変動があります。
原油の輸入"量"は4カ月ぶりにプラス(+5.5%)にとどまったのに、輸入"額"は87.8%も膨らみました。単価が跳ね上がったからです。さらに内訳を見ると、米国からの輸入量が9.1倍、中東からは32.8%減少しています。中東情勢の緊迫化を受け、供給元を切り替える動きが進んでいるのです。
これは資源の地政学が教える、経済安全保障そのものです。一つの地域に頼りきると、貿易の相互依存が示すとおり、その地域の情勢が悪化しただけで自国の経済が揺らぎます。多少コストがかさんでも供給元を分散させておくのは、供給が断たれるという最悪の事態を避けるための備えです。実際、中東からの輸入も金額では20.7%増えており、「中東を切った」のではなく「中東だけには頼らない」構えへと動いていると読めます。
貿易赤字のニュースを見たら、金額の大小だけでなく、どの資源を誰から、なぜ買っているかという調達先の変化に目を向けると、単なる景気の悪化ではなく、地政学リスクへの備えという、もう一つの物語が見えてきます。