日本の漫画「ドラゴンボールZ」をテーマにした巨大テーマパークが、パリ近郊に誕生することになりました。フランスとサウジアラビアは、セルジー・ポントワーズに3つの異なるテーマパークを建設するため、合わせて60億ユーロ(約1兆1100億円)を投じることで合意しました(日本経済新聞、8月25日)。資金を調達するのはサウジアラビアの投資会社キディヤで、約2万2000人の雇用創出が見込まれています。
面白いのは、この構想が生まれた経緯です。記事によれば、マクロン大統領がサウジアラビアを訪れた際、ムハンマド皇太子と互いにドラゴンボールZのファンだと分かったことがきっかけだったといいます。国家戦略の会議室からではなく、二人の個人的な熱意から、1兆円を超える投資が動き出したのです。
この一件は、エンタメ産業の面白さをよく表しています。日本で生まれたコンテンツが、フランスの土地とサウジアラビアの資金という、当の日本を介さない組み合わせで、巨大な経済価値を生み出そうとしているのです。作品そのものは日本発でも、それをどう投資対象として育てるかは、資本を持つ国が主導権を握る——コンテンツの生産地と、それを事業化する主体が一致するとは限らないことを、この案件は示しています。
こうした動きは、グローバル化の一断面でもあります。国境を越えて人気を得た文化(この場合は日本の漫画)を、別の国の資本が投資先として選び、さらに別の国に建設する——モノ・カネ・文化が国境をまたいで結びつく現代らしい構図です。ある国の文化的な影響力(ソフトパワー)が、その国の経済的な後押しなしに世界を巡っていく様子は、これからのエンタメ産業のニュースを読むときの、一つの補助線になるはずです。