ネット通販で安い買い物をするとき、その商品が安全かどうかを、私たちは誰が見張っていると思っているでしょうか。売っている個々の業者でしょうか、それとも「場」を提供するサイトでしょうか。
2026年7月20日、EUの欧州委員会がこの問いに一つの答えを突きつけました。中国系の通販プラットフォームAliExpressに、5億5000万ユーロ(約1000億円)の制裁金。安全基準を満たさない玩具や化粧品などの違法製品を放置し、検出・削除の仕組みが不十分だったと判断されたためです。削除したはずの商品が、何百万件と再出品されていたとも指摘されました。
根拠になったのが、2022年に施行されたデジタルサービス法(DSA)です。DSAは、多くの人が使う巨大なプラットフォームに、違法な商品や情報のリスクを評価し、対処する義務を課します。「場を貸すだけで中身は業者の責任」という従来の立場から、「大きな影響力を持つ者は、その場で起きることに責任を負う」という考え方への転換です。プラットフォームはネットワーク効果で一気に巨大化するぶん、社会が無視できない存在にもなります。
この制裁金は、DSAに基づくものとして過去最高です。昨年のX(旧ツイッター)の1.2億ユーロ、今年のTemuの2億ユーロを上回りました。金額の大きさは、EUの本気度を測る一つの目安になります。
そして、もう一つ持ち帰りたいのが域外への波及です。EUの厳しい基準に合わせた企業は、コストの都合から世界中で同じ運用をしがちです。結果として、EUのルールが事実上の世界標準になる。これは「ブリュッセル効果」と呼ばれます。プラットフォーム規制のニュースは、「仲介者はどこまで責任を負うのか」と「その基準は国境を越えて染み出すのか」の二点で読むと、遠い欧州の話が自分の買い物にもつながって見えてきます。