「レアアースが止まると、日本のGDPが2.3%減——しかも主要国で最大」。IMFのこの試算は、一見すると資源の話ですが、その芯にあるのは私たちがふだん「効率がいい」と呼んでいるものの裏側です。
レアアースは、モーターやスマホ、精密機器の性能を左右する材料で、産出や精製が特定の国に強く偏っています。世界は長らく、最も安く作れる相手から買うことで全体の効率を上げてきました。この分業自体は理にかなっています。問題は、効率を突き詰めて供給を一点に寄せるほど、その一点が止まったときに全体が痛む、という弱さが同時に育つことです。特定の資源を握られていること自体が交渉の力になる——これが資源の地政学の勘どころで、日本の打撃が最大と出たのは、ハイテク製造の比重が大きく、代わりの入手先をすぐには用意できないからです。
この構図は、レアアースだけの話ではありません。半導体をめぐる綱引きも、供給が一部の国・企業に集中していることが急所になっている点で、まったく同じ形をしています。「安く手に入る」ことと「いつでも手に入る」ことは、別の問題なのです。
持ち帰れる読み方はこうです。資源や部品の供給網(サプライチェーン)のニュースを見たら、値段の上下だけでなく、「どこか一国・一社に集中していないか」と「止まったとき、代替に切り替えるまでどれくらいかかるか」を探してください。効率と安全は、しばしばトレードオフの関係にあります。安さの裏にある「一点への依存」を見抜けると、経済安全保障という言葉が、急に具体的な絵として立ち上がってきます。