アズリテ
今日のニュース2026年7月29日

植物の毒が、微生物のごちそうに——ニコチンが土の中でしていた仕事

3 行サマリ
  • 北海道大学・理化学研究所・京都大学は7月27日、タバコが作る毒性成分「ニコチン」が、根のまわり
  • (根圏)の微生物のはたらきに関わっていると発表した。ニコチンを分解して栄養源にできる細菌
  • アルスロバクターが、根圏で競合上の優位を得ていた。ニコチンは昆虫には強い毒だが、多くの根圏
  • 微生物の増殖は抑えず、地上と地下で違う役割を果たしていた。成果は学術誌 Microbiome に掲載。
この記事の概念生態系進化科学的方法

このニュースを読むための教養

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生態系というシステム
生き物どうしを「物質のやり取りの網」として見る、生態系の土台・約 3
まず 3 分で学ぶ
進化——生命を貫くただ一つの理論
細菌が環境に合わせて能力を得ていく、進化という見方・約 2
まず 2 分で学ぶ

教養の視点

「タバコのニコチンは害虫よけの毒」——これはよく知られた話です。ところが今回の研究は、その毒が土の中で、まったく別の仕事もしていたことを見せてくれます。

舞台は、根のまわりのごく狭い土の層(根圏)。ここには無数の微生物が暮らし、植物と養分をやり取りしています。生き物どうしを敵味方ではなく物質のやり取りの網として見る——これが生態系の見方です。研究チームが見つけたのは、その網の中で、ニコチンを分解して栄養にできる細菌(アルスロバクター)が優位に立っている、という関係でした。昆虫には猛毒のニコチンが、この細菌には独り占めできるごちそうになっていたのです。毒か資源かは、物質そのものではなく、向き合う相手で変わる。植物は毒で虫を防ぐと同時に、その毒を食べられる微生物を選び、根圏の顔ぶれをいわば編集していた、とも言えます。

もう一つ面白いのは、この細菌がニコチンを分解する力を「遺伝子の水平伝播」——別の細菌から遺伝子を受け取ること——で手に入れていた点です。使える能力を持った者が結果として増えていく。これはまさに進化のはたらきで、土の中の勢力図が固定ではなく、更新され続けていることを示します。

持ち帰れる読み方はこうです。生き物のニュースで「毒」「有害物質」と出てきたら、「誰にとって・どんな条件で」を一言おぎなってみてください。毒性は絶対の属性ではなく関係で決まり、その関係もまた進化で移ろっていく。自然界を「良い/悪い」で切り分ける前に、物質がぐるりと巡る網として眺めると、思いがけない役割が見えてきます。

読み解きチェック

学んだ概念を、この記事に当てはめてみましょう
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Q1この記事では、昆虫には強い毒であるニコチンが、ある根圏細菌にとっては栄養源になっていました。ここから見えてくる『毒』の捉え方はどれですか?
Q2記事では、細菌アルスロバクターが『遺伝子の水平伝播』によってニコチンを分解する力を得たとされます。これはどの見方の具体例といえますか?

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