「一つのアプリで、役所の手続きも銀行のログインも済む」。便利です。でも便利さの設計を裏から見ると、二つの見方が立ち上がります。
一つは個人データの集約です。バラバラだった手続き・認証・税や年金の情報が一カ所に集まると、使う側は楽になります。同時に、その一カ所は「あなたが誰で、何をしたか」をまとめて映す鏡になる。データは集めるほど便利になり、集めるほど漏れたときの被害も大きくなる——この二面性は避けられません。
もう一つはサイバーセキュリティの的です。重要な機能を一点に束ねると、守る側は集中して守れる一方、攻める側にとっても狙いどころが一点に定まります。鍵をまとめた便利なキーホルダーは、落としたときの被害もまとめてやってくる。だから「まとめる」設計は、便利さと同じ量だけ「その一点をどれだけ堅くできるか」に賭けることになります。
ここで持ち帰れる読み方を一つ。新しい「一元化」「ワンストップ」のニュースを見たら、「何が便利になるか」だけでなく「どの一点に、何が集まるのか」を並べて考えてみる。集約はいつも、利便性と集中リスクをセットで連れてきます。便利か不便かの一本の物差しだけでなく、二本目の物差しを持っておくと、制度の設計が立体的に見えてきます。