「これ、人間が書いたの? それともAI?」——見分けがつかなくなってきた、と感じたことはありませんか。EUはこの問いに、技術ではなく制度で答えようとしています。8月2日から、AIと話すときは相手がAIだと告げること、AIが作った画像や音声には機械が読み取れる印を付けること、そしてディープフェイクは人が分かる形で表示することが、法律上の義務になりました。
ここで効くのがAIのガバナンスという見方です。新しい技術が現れると、「禁止するか・放置するか」の二択で語られがちです。でも実際の制度は、その手前の一手から始まることが多い。中身を作ること自体は止めず、まず「それが何なのかを示させる」——今回のルールはまさにここに照準を合わせています。禁止でも放任でもない、第三の入り口です。
なぜ表示なのか。生成AIは、本物と区別しにくい文章や画像を大量に作れます。区別がつかないままでは、偽情報が「本物のふり」をして広がる。ラベルは中身の良し悪しを裁くのではなく、受け手が「これはAI由来だ」と知った上で判断できる状態をつくる。判断を奪わず、判断の材料を足す発想です。
持ち帰れる読み方を一つ。新技術の規制ニュースを見たら、「禁止か・自由か」だけでなく「表示させているのか、中身を裁いているのか」を分けて見てみる。食品の成分表示や広告の「PR」表記と同じで、社会は新しいものにまず「これは何か」を名乗らせることから制度を始めます。この順番が見えると、次に来るどんな技術規制のニュースも、少し落ち着いて読めるようになります。