ある会社の決算書が「実際より良く見える」ように作られていたとしたら、それを信じて株を買った投資家はどうなるでしょうか。モーター大手ニデックの会計不正をめぐり、2026年9月9日、株価下落で損害を受けたとする株主28人が東京地裁に総額約6600万円の損害賠償を求める訴訟を起こしました。
問題の核心は、情報の非対称性です。会社の内側にいる経営陣は、実際の業績を正確に知っています。一方、外部の投資家は、会社が公表する決算書という情報を通じてしか会社の状態を知ることができません。第三者委員会の調査によれば、ニデックでは費用計上を先送りするなどして、累計1607億円もの純利益が水増しされていたといいます。「良く見える」情報をもとに投資家が売買を判断していた以上、真実が明らかになって株価が下がれば、それは投資家の実損害になります。
今回の訴訟は、経営陣個人の責任を追及する「株主代表訴訟」ではなく、株主自身が会社に損害賠償を求める「証券訴訟」です。ニデックはすでに複数の株主から、退任済みを含む取締役の法的責任を追及するよう求める書面(提訴請求)も受け取っており、企業が誰に対して責任を負うのかという問いが、複数の法的手続きを通じて突きつけられている局面だといえます。
決算書の数字を鵜呑みにできるのは、それが正確だという前提があってこそ。この前提が崩れたとき、市場の信頼そのものが揺らぐのです。