米の値段が上がれば、作る人は増えるはず——教科書ではそう習います。でも現実のコメ農家では、逆のことが起きています。帝国データバンクが2026年9月6日に発表したところでは、2026年1〜8月だけで32件の農家が廃業・倒産し、3年連続で30件を超える高水準が続いているのです。しかも2025年度は記録的な米価高騰で、法人経営の農家の8割近くが増益という、過去20年で最高の利益水準を記録した年でした。
「儲かっているのに辞める」——この一見矛盾した動きは、需要と供給の教科書的な図式だけでは説明できません。価格という信号がどれだけ強くても、それに応える力(この場合は生産を続ける体力)がなければ、供給は増えないのです。記事が挙げる理由は、代表者の高齢化、老朽化した機械設備の更新の難しさ、猛暑や豪雨といった気象リスク、そして人手不足。米価という一時的な追い風だけでは、こうした構造的な足かせを取り除けません。
さらに皮肉なのは、その高騰の反動です。米価上昇を受けて生産量が回復し、需要は減退。結果、民間在庫が積み上がり、2026年産の概算金は前年から2〜4割も下落する見通しだといいます。価格が上がれば供給が応え、市場が均衡する——というシンプルな物語の裏に、高齢化という重い足かせと、行き過ぎた反動の両方が隠れていたわけです。
「値上がりしたのに供給が増えない」というニュースを見たら、その裏にどんな構造的な制約があるのか、疑ってみる価値があります。