白亜紀後期、約7000万年前の地球では、北極域でも恐竜が暮らせるほど温暖だったことが化石からわかっています。ところが長年、気候モデルではこの温暖さをうまく再現できず、化石が語る姿とモデルの計算結果の間にギャップが残っていました。東京科学大学の樋口太郎研究員や東京大学の阿部彩子教授らの研究チームは、このギャップをスーパーコンピュータで解いたと発表しました。
鍵になったのは、CO2濃度だけでなく「大陸の配置」も条件に加えたことです。プレートテクトニクスの考え方に立てば、大陸は今の位置に固定されてきたわけではありません。白亜紀後期は大陸氷床がほとんどなく、北半球の高緯度域に今よりも広い陸地が広がっていました。この地理条件のもとでは、地軸の傾きが変化したときの気温の上がり方が、現代の大陸配置よりも数倍大きくなることが分かったのです。
CO2濃度、大陸配置、地軸の傾き——一つひとつは単純化された条件ですが、これらを組み合わせて計算する数理モデルによって、直接目にすることのできない7000万年前の地球の姿を、化石データと矛盾しない形で描き出せました。過去の気候を復元する営みは、そのまま今の気候変動を読み解くモデルの精度を確かめる作業にもつながっています。